10人目の居場所は、ここに。 (ページ10)

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憧れは、ここに。　ー滝沢歌舞伎ZEROーページ10

Raul side

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新橋演舞場

今日もここで、僕は息をしている。

憧れた場所、沢山のお客さんの前で歌って踊りたいと思った場所。

それが今、現実になっている。

付いて行くのがやっとなほどハードな稽古、毎日が勉強の日々。

弱音なんて吐いてられないけど、とめどない汗と涙で立ち止まってしまったこともあった。

そんな時、みんなが絶対そばにいてくれて、"大丈夫" と妙に落ち着く言葉をかけてくれた。

束の間の休憩時間、今はこの稽古場にいないAくんのことを考える。

加入が決まってから何度か仕事を一緒にしているけど、お互い人見知りな僕らはまだあんまり話せていないと思う。

Aくんのことを知らないジュニアはいない、ってぐらい有名な人。

その知名度はもちろんジャニーズに詳しくない人にまで浸透しているほど。

俳優としてのキャリアは長く、入所したのだって照くんと同じくらい。

それなのに、ジュニアとしての活動をするようになったのはずっと後だから、という理由でみんなに敬語を使っている、そしてどういう訳か僕にまで。

慣れたらタメ口になるよ、と佐久間くんが言っていたように、6人には結構な頻度でタメ口を使っているけど。

会う度に一礼されると困ってしまう。

だって、葉歌Aは僕にとって

"憧れの人"

だから。

佐久間「うたあと20分で到着するってー！」

岩本「じゃあ午後から参加できそうだな」

深澤「いやぁ、気合入っちゃうな」

渡辺「いつも入れとけよ」

深澤「入ってるわ！！冗談だよ！！！」

Aくんはこのハードな稽古期間にドラマの撮影まで入っている。

しかも超有名俳優さんが主演のドラマの準主役を任されたらしく、稽古に出られなかったり途中から参加する日も多い。

それでもAくんはいつも完璧だ。

演技だって、踊りだって、セリフだって全て。

気がかりなのはそんなことじゃない。

最も僕が気にするようなことじゃないのかもしれないけど。

Aくんがいない時の稽古ではその役に穴を開けておくわけにもいかず、他のジュニアの誰かが代役を務める。

Aくんの代役だなんてそんな名誉なことはないと思うのに、それをよく思わない人だっているんだ。