・ ページ43
Sakuma side
・
みんなが思い思いの顔つきで出て行った病室に、何となく俺だけ残った。
ぐったりとベッドに横たわるうたの姿は、忘れていたけど病人そのもの。
軽い咳を何度かして口元を抑えながら枕元のガーグルベースを取る。
ベッドから起き上がり苦しそうに少量の血を吐きだすと、くたっと力が抜けて前に倒れそうになった。
佐久間「…うた、今看護師さん来てくれるって、大丈夫だよ」
『…………さくま、くん、』
佐久間「ん？」
『……怒って、る？』
佐久間「そりゃもちろん。俺だけじゃなくて、みんな怒ってるよ」
『……ごめんなさい、みんな忙しい時なのに』
佐久間「うたはさ、みんなでデビューしたくないの？」
『したくない、とか、みんなが嫌いってことじゃない』
佐久間「うたはさ、確かに他の人より抱えてる問題は多いと思う。肉体的にも、精神的にも弱い部分がある、って前から自分でも言ってたでしょ？」
『うん、だから、』
看護師さんが来てくれて、一旦話は打ち切り。
ガーグルベースを回収したり点滴と輸血を交換したり、されるがままのうたは本当にしんどそうな顔をしている。
佐久間「ゴメンね、しんどいとこ色々話して。もうちょっとだけいい？」
『…うん、』
佐久間「全部を完璧にこなす必要なんてないと思うんだ。お仕事をセーブしたり、断ったり、色々方法はあるんじゃない？」
『………そしたら、意味ないよ。Snow Manの仕事をセーブするんだったら、もう、いる必要ないじゃん』
佐久間「俺はね、うたがこのグループにいてくれなきゃ、何の意味もないと思う。
うたは1番知名度があるし、外の仕事に行く度に前から【Snow Manの葉歌Aです】って言っててくれてたでしょ？
正直ね、情けかけないでほしいって思った時もあった、ゴメン！
でも、知名度とかそんなものはデビューを控えている今となっては求めるものじゃないよね？
もっと大事なものを守らなきゃ。うたがいなくなったことで空いた穴は誰も埋められない」
『…………分かってるの。辞めたいだなんてみんなに言っても困らせるだけだってこと。
根っからネガティブで、悪い方向にしか頭が働かなくて、何度も思った。
アンチの人の声も、あの振付師さんの言葉も、そればっかり考えちゃって、アイドルに向いてないなって。
でも、踊ることも表現することも好き。だからこそ分かんないや』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 632人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Radu | 作成日時：2021年5月21日 22時
