・ ページ40
Abe side
・
その電話から数時間後、ジャニーさんは旅立ってしまった。
前を向いて生きなきゃ、このステージを続けなきゃ、そう言って9人で涙を拭き合った。
ここにうたがいないことだけは心残りだけれど。
岩本「うたに連絡した？」
阿部「さっき送った」
宮舘「返事は？」
阿部「来てない、既読だけは付いたけど」
佐久間「……心配だね」
深澤「待つしかないよ。うたが帰って来る場所に相応しい俺らでいなきゃ」
思い出すのは5年前のこと。
仕事を放り出してうたが帰って来た、あの日。
それから2年間経っても咀嚼できなかったうたの後悔。
あんな思いを二度としたくないから、うたは帰らなかった。
この数時間という隔たりに、後悔を残さないように。
サマパラまで1週間を切ったその日、うたから突然の帰国の連絡が入った。
ここ2週間くらい、誰にも返信がなく、照が送ったビデオに既読とスタンプが付くだけ。
それ以外のメンバーのメッセージには既読すら付かない。
不安の連鎖に、突然の終止符が打たれた。
空港まで迎えに行く？
そんな話まで飛び出した。
ラウ「うたくんが帰って来る飛行機って夜らしいから、みんなで迎えに行こうよ！！」
岩本「うたが喜ぶかどうかだけどなぁ」
向井「え？喜ばんの？」
宮舘「どんな状況だか分かんないしねぇ」
阿部「忙しいのに申し訳ないって思うかもしれないし」
ラウ「そっか……」
深澤「ラウと誰かで行って来たら？喜ぶんじゃない？」
ラウ「え！行きたい！」
佐久間「誰行く？」
渡辺「やっぱ涼太じゃない？」
宮舘「じゃあそうするよ」
そんな話をして、帰って来るまでにダンスも歌も完璧にしておかなきゃね、と言い合っていたのにもかかわらず。
血相を変えてレッスン室に入って来たマネージャーは絶望的な一言を発した。
「葉歌さんが！向こうで、倒れられたって連絡が入りました、急性胃潰瘍だそうです。飛行機にはドクターが同乗して、到着次第入院になる、とのことです。吐血が、酷かったとか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 632人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Radu | 作成日時：2021年5月21日 22時
