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Meguro side
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暫く見ていたら、レッスンは終わり、続々と監督さんを筆頭に大人がスタジオから出てくる。
それを隠れて見守り、ようやく人の波が途切れた頃にそのスタジオをもう一度覗いた。
Aくんはフラフラと倒れこみ、背中を震わせて必死に呼吸をしている。
俺が近付いて来たのに気付くと、パッと顔を上げて立ち上がろうとしたけど、それも出来ず。
目黒「大丈夫、じゃないですよね？あれ、どう考えても、」
『言わないで、下さい。誰にも。事務所の人にも、今見たことは』
目黒「でも、」
『出来ないのは自分の努力不足だから、誰も悪くないし』
目黒「十分完璧だったじゃないですか、ジャニーズの先輩方と同じぐらい、完璧なダンスでした」
『……それで、いいとは思わないんです。
これは舞台でもコンサートでもなく、演技が主軸になる映画なんです。
だから、僕は、精一杯、この "結城葵" という役を演じないといけない。
そこに、ダンスに人生をかけた高校生がいて、僕は彼にならないと、この映画は完成しない。
そのためには、誰よりも努力して、彼を演じるんじゃなくて、彼にならないといけない。
だから、見なかったことにしてもらえませんか？』
目黒「……分かりました、言いません誰にも。
この映画を邪魔するような真似はしたくないので。
でも、無理だけはしないで欲しいんです。
代わりの人間のくせに偉そうなことを言って申し訳ないんですけど、それでも。
俺は、あなたのダンスを見てて、いつか同じ舞台で踊りたいって思いました。
その時まで……その体が、無事であってほしいんです」
『目黒蓮くん、またお会いしましょう』
フラフラと立ち上がって、帰ってしまったAくんを追いかけることは出来なかった。
結局、次の日からAくんは他の俳優さんとのレッスンに合流したらしく、俺の出番はそこまでだった。
見学に来ていいよ、と俺に対しては優しいふりをする監督さんに言われて、そのレッスンを見学しに行った。
露骨な声は飛ばないけれど、それでもセンターとして一番輝いているAくんばかりが注意されている。
世の中は理不尽だ。
この世界のどんな一面でも見る気があるか、その答えはこんなに奥深くにあった。
何も知らずに平気で返事をした過去の自分が恥ずかしい。
Aくんはこんなにも努力を積み上げているのに、自分は、何を目指せばいいのかさえも分かっていない。
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作者名：Radu | 作成日時：2021年5月21日 22時
