10人目の居場所は、ここに。 (ページ24)

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Meguro side

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誰が踊っているのか、誰が怒っているのか。

それが気になって覗きに行ってしまった。

スタジオのドアは開いていて、外から完全に丸見えの状態。

まるで全てを見てくれと言っているような、曝け出しているような。

『そこは逆向きだって言ってるだろ！！！』

『何度言ったら分かるんだ！！！』

『こっちも暇じゃないんだよ？一回で覚えてくれって言ってるじゃないんだから、何度も言わせないでくれるか』

『違う、最初からやり直し』

『全くセンスがないんだな！！！そういう奴は、人より努力しなきゃダメなんだよ！！！！』

『この映画、無くなってもいいのか！？お前の行動次第で、そうなるんだよ！！！！』

『それも違う、全然ダメ。さっき言ったことすら何も出来てない』

『やる気あるの？は？なに？休憩なんか与えるわけないでしょ』

『この曲を完璧にするまで、今日は帰さねぇからな？分かったならさっさと練習しろ！！！』

監督さん

プロデューサーさん

振付師さん

その他スタッフさん

何人もが見守る目の前で、Aくんが踊っていた。

その曲はさっきまで俺らがやっていたもの。

どう見たって完璧なのに。

どう見たって堂々たるダンスは主役に匹敵するもので、先輩のダンスと同じぐらい、それ以上に上手だった。

手足の動き、繊細な指先、しなやかに曲がる体、表現される感情

全てが誰よりも輝いているのに。

何人もの罵声が入れ替わりで響く。

怒鳴り散らす人もいれば、Aくんの胸倉を掴んで冷静に言葉の暴力を突きつける人も。

手元の資料をばら撒く人もいれば、台本をAくんにぶつける人も。

後ろから見たAくんの背中は震えていて、でも鏡越しに見る顔は泣いていなかった。

廊下を通るスタッフさんが "まただよ、可哀想だよね" と言いながらも見て見ぬふりをして通り過ぎる。

ここに1週間近く来ていたというのに、知らなかった。

Aくんの着ているシャツは完全に汗を吸いきっていて、それでも顔が真っ赤で、滝のように汗が床に滴り落ちる。

よく見れば、腕にも足にも痣がある。

それもそのはずだ、曲の途中で入るアクロバットも、このフラフラの状態でやれば失敗するに決まってる。

その度に動きが止まって、それにまた怒号が響いて、見ているこっちが泣きたくなった。

こんなレッスンが何時間、何日続いているんだろう。