10人目の居場所は、ここに。 (ページ23)

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Meguro side

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それは16歳の頃。

まだ入所してから2年しか経ってなくて、グループにも入れていなかった時のこと。

掛かって来た電話に出れば、その相手は社長だった。

明日からここに来て、それだけの連絡で、どんな仕事の内容なのかも教えてもらえなかった。

ただ一言、この世界のどんな一面でも見る気があるか、とだけ聞かれた。

迷うことなく肯定の返事をしたのが良かったのか悪かったのか、未だに分からない。

次の日呼び出されたのはジュニアのレッスン場のようなところで、ただいる人たちが違った。

明らかに数の多い偉そうな人たち、テレビで観たことがあるような俳優さん、場違いなのは明白だった。

『目黒くん、だよね？』

目黒「はい、そうです。目黒蓮です、ジャニーズジュニアをやってます」

『聞いてるよ。葉歌クンの代わりに入ってくれるって』

目黒「葉歌くんって、あの、葉歌Aくんですか？」

『そうだよ、ひょっとして聞いてない？この映画の主演が葉歌クンなんだけど、ダンスがまだ仕上がってなくてね。場所の確認とか、振付とか、そういうのを目黒くんに任せたいんだ。後から葉歌クンには映像で送るし、君からも色々伝えて欲しい』

目黒「勿論です！！」

なんだよ、ジャニーさん。

そんな凄い仕事だって何一つ教えてくれなかったじゃないか。

あの有名な俳優の葉歌Aくんの代わりに何故俺だったのか分かんないけど、やれることは何でもやるよ。

そのチャンスを与えてくれたんだよね？

その現場は思っていたより居心地が良かった。

"ジャニーズなんだよね？" とテレビで観ていた俳優さんたちが話しかけてくれたり、ダンス上手だねと監督さんや振付師さんが褒めてくれたり、映像の世界にちょっとだけ憧れを抱いた。

1週間経ってもAくんは現場に現れず、ノートに書き溜めた注意点を伝える事が出来ずにいた。

プロデューサーさんに聞いてもはぐらかされるだけで、誰も知らないみたいだった。

ちょっとだけ自主練がしたくて、他の人が帰った後も練習を続けていたある日、隣のスタジオから今自分がやっている曲と同じ音楽が聞こえて来た。

それに続く怒号、罵声、耳を塞ぎたくなるほど酷い内容だった。

それは、Aくんに向けられていたものだった。