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Raul side
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岩本「うた？立てる？ここ寒いから、取り敢えず戻ろう」
『……ごめんっ、足、痺れてて、』
岩本「手も？」
『………ん、』
岩本「過呼吸？どした、最近あんまなかったよね。ま、話は後だな、背中乗れる？」
『………重い、よ』
岩本「バカ、うた1人ぐらい余裕だ」
言う通り、岩本くんは楽にAくんを背中に乗せて稽古場に戻る。
また軽くなった？と聞かれて顔を背けるから、きっと図星なんだろう。
確かに数週間前に会った時より顔周りが細くなったし、今着てる稽古着だってぶかぶかだもん。
稽古場に戻ればあっという間にAくんはメンバーに囲まれた。
壁の方にストレッチマットが敷かれ、その上に寝かせられる。
体はやっぱり正直なのか、目の上に腕を乗せてしんどそうに呼吸をしている。
深澤「ラウが見つけてくれたの？ありがとね」
ラウ「いや、Aくんのお仕事の電話ってどんな感じなのかなって気になって。付いて行っただけです、ごめんなさい」
深澤「いいんだよ、最終的にラウのお陰でうたに何もなかったから」
渡辺「お手柄だな」
ラウ「Aくん、過呼吸ですよね？よくあるんですか？」
深澤「詳しくは本人から聞いて欲しいんだけどね、うたが前に活動休止してたじゃん？その頃に色々あって、今でもしんどくなると過呼吸起こしちゃうんだよね。その時はよろしくね、ラウも」
ラウ「勿論です！！」
渡辺「今日は何が引き金になったんだか、やっぱさっきの電話？」
稽古は再開され、Aくんの隣には宮舘くんと出番が今はない僕だけが残った。
音楽と、靴が擦れる音と、セリフだけが稽古場を包む。
その様子を起き上がって見ていたAくんだったけど、段々その顔は床へ落ちて行って、蹲る形になってしまった。
激しく上下する背中、音が止む度に響く呼吸音、「ちょっとまずいかな」と宮舘くんが呟く。
宮舘「うた、ちょっと外行こうか？」
『………ん、いいっ、めいわくっ、だてさんも、稽古、出て、っは、ぼくは、いいっ、から』
宮舘「うたを一人にしておくわけにはいかないよ。ここにいるとしんどいでしょ？外出ようか、それとも今日はもう帰ろっか？」
『…………かえっても、いいです、か、』
宮舘「その方がいいね、夜もドラマの撮影あるんでしょ？体力温存しておこうか」
稽古好き、仕事好きのAくんが自ら帰ると宣言したのはこれが初めてだった。
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作者名：Radu | 作成日時：2021年5月21日 22時
