10人目の居場所は、ここに。 (ページ11)

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Raul side

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自分の出番もあるのに何故ドラマでいない奴の代役をしなければならないんだ

実力あるSnow Manの中で演技をするだなんて、正直恥晒しだ

戻って来なくていいのに、ずっと代役を任せられていたいのに

色々な感情があるんだろう、午前中最後の通し稽古が終わってすぐにAくんがやってくると、ちょっと冷たい視線が向けられた。

それに気付かないAくんじゃないし、それに気付かないメンバーじゃない。

疲れた表情で稽古場に入って来たAくんを岩本くんや深澤くんが囲む。

岩本「午後から合流できそう？最初の通しは見学とかでもいいよ」

『いや、大丈夫。やります』

深澤「無理すんなよ？体壊したらドラマまで大変になっちゃうだろ？」

『……ん、分かってます。今日僕の代役やってくれた子、誰でしたか？』

宮舘「〇〇だよ、あっちにいる」

『ありがとうございます』

今日、Aくんの代役を任されていたジュニアの子に声を掛けに行く。

やる気のある子だったり、ちゃんとした子はAくんに昨日からの変更点を伝えたり、大変だったけどやらせて頂けて光栄でした！だなんて話をしたりするんだけど、今日の人はちょっと違った。

時々いるタイプ、ドラマで遅れて来るだなんて主役だから許されるんだな、自分だったら怒られるのに、みたいなちょっと不満に思っているような。

会話もそこそこにその子はお昼休憩に行ってしまい、残されたAくんは何個も後輩なのにありがとね、と頭を下げる。

見ていられない、あんなの酷すぎる。

ギュッと握った拳の爪が掌に食い込んで少しだけ痛かった。

でもそれも、Aくんの心の痛みと比べたら全然。

阿部「じゃ、またジャンケンする？」

宮舘「そうだね、時間あんまないし」

『……あ、僕、パスでお願いします』

深澤「食べないの？持たないぞ？」

『車で食べて来たんで、大丈夫』

そう言うとAくんは稽古場の隅っこの床に座って、分厚い台本を読み始めた。

せめて椅子に座ればいいのに、一緒にいたいのに、沢山お話したいことがあるのに、その言葉は飲み込んで心の中に仕舞い込んでおく。

されるがまま、流されるまま。

あんなにも憧れて、追いつきたいと思ったAくんに近付くことさえ出来ない。

自分のことで精一杯で、この舞台を完成させることを目指すしか出来ない。