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時が止まったような気がした。
というか、止まっていた。
「え?」
声が漏れた。
「……ボクの、せいだ」
ハッキリと言えば、その通りだ。
死よりも深い絶望をアーミーに突きつけてしまったから、アーミーは律者へと覚醒してしまった。
しかし、厳密に言えばそれはBを第3会議室へと仕向けた【ハーキマー】のせいだ。
Bは秩序の力に洗脳されていただけ……なのだが。
そんな慰め、現状を前に到底効くはずも無く。
「ボクのせい、ボクのせいで、隊長が、隊長が……」
Bは今にも発狂しそうな表情で真っ白な唇を震わせていた。
不幸な事に、残酷な事に、Bは秩序の力に洗脳されていた時の記憶がハッキリある。
自分の発言で自分が人生で最も慕う隊長がどんな顔をしたか、どんな声でどんな返事をしたか、全て憶えている。
Bは完全に気を病んでいた。
自分が隊長を得体の知れない怪物にしてしまった。
全て、自分のせいだ。
「……、……B!」
「!」
「気を確かに持て。お前のせいじゃない、お前は……ただそこにいればいい」
「ぼ、ボクは……ボクは……」
本当は目を瞑って逃げ出したかった。
隊長の事がどうでもよくなったのでない。隊長が自分の目の前でこんな事になっていくのを見るのに耐えられないのだ。
少なくとも、耐えられるほどBは強くできていない。
「オレは……必ずアーミーをヒトに戻す」
──算段はゼロだった。
しかしまだ試していないだけで、希望はあった。
試してみる価値もあった。
やがてアーミーは落ち着いた。
光輪も羽も消えていないが、肩で息をしながらもアーミーは律者人格に一時的に乗っ取られずに済んだ。
「はぁ……はぁ……っ」
「アーミー、【瞳察】の権能はどんな感じだ? 本当に精密な予測が出来るのか?」
アーミーの律者人格はまだ覚醒というには足りなかった。
故に、まだ権能の効果もよく分かっていない。
「予測は……わか、らない……ワガハイの……い゛っ」
時々オレンジ色の閃光が飛び散って、アーミーは震える手を両手で押さえながら顔を机にうずめた。
「──!」
シャキン! と鋭い音と共にアーミーの瞳が眩いトパーズの光を放った。
光輪は広がり、羽も成長し大きくなって輝いた。
「どうした……!?」
「──これがワガハイの【瞳察】……」
ゴーグルが来る、と彼が言った時には鍵のかかっていたはずのドアは開いていた。
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もだま(プロフ) - 更新待ってました。今回も文章が上手でストーリーや世界観にぐんぐん惹き込まれました。キャラクター一人一人の感情表現も素晴らしく、話に没頭してしまいました。今回も続きが気になる終わり方でとても面白かったです。これからも無理せずに更新頑張ってください。 (12月22日 23時) (レス) id: 762cea6966 (このIDを非表示/違反報告)
コロ○ - お久しぶりです!上手く言えないのですが、文に、物語に引き込まれます。素敵です。テンションが違いますがコロ○です。展開が気になります。ゆっくりでも良いので更新頑張ってください! (11月2日 22時) (レス) @page43 id: c20130040f (このIDを非表示/違反報告)
時城はるね(プロフ) - 初めまして。この作品、とても細かい設定まであって読みやすいです。絵もとても素敵です。この作品、最高です。これからも無理せずに頑張ってください! (10月17日 22時) (レス) @page37 id: 8e86fe11f1 (このIDを非表示/違反報告)
コロ○ - お久しぶりですコロ○です。受験生の妹に紹介したら、休憩の時にちょくちょく見てるっぽいです。兄妹ファン…憧れだったんですよ。あと絵本当にお上手ですね!すごいです。俺これからモチベ上げる隊になろうかな。続きが楽しみです!頑張ってください! (9月26日 2時) (レス) id: 01a934e3d5 (このIDを非表示/違反報告)
am - こんにちは初めまして。この作品の設定や世界観が凄くてつい惹き込まれてしまいました。次はどんな展開になるかと楽しみです。あとイラストのグローブ君カッコ良くてその他も見てみたいです (9月18日 19時) (レス) @page35 id: c6b1ac05e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるやん | 作成日時:2023年5月31日 20時