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「……」
スミカケはゴーグルの必死の呼びかけに応えなかった。
否、応えられる状態に無かった。
体中にこびりつく酸化した青い血液と、それを蝕むように広がっている崩壊エネルギー。
手枷足枷はもちろんのこと、さらに彼はヘルメットを被っていた。
じっくりと観察すると、目が薄らと開いていた。
もっとも、それに生気は宿っていない。ブルーパールカラーの目がどす黒くなって、一切の光を受け付けずに堕ちていた。
しかし、息はしているようだ。
だからこその【地獄】であるのだが。
「スミカケ、起きてよ! どうしたの!?」
体を揺さぶるゴーグル。
じゃらじゃらと耳をつんざくような金属音が炸裂した。
その時。
「……ご、ぐ……る……っ」
「!!」
かすれた声だったが、静かすぎた部屋によく響いた。
「スミカケ! スミカケ、大丈夫!?!?」
目に微かながらも光が戻る。
ゴーグルはその様子を見届け、応急処置の道具を取り出した。
「お、れ……」
「喋っちゃダメだよ、応急処置が終わったらオレがみんなを呼んでくるから!」
「……だめ、だ……っ」
ゴーグルの手が止まった。
「だめ……って、なんで?」
「ぅ……あ、ッア、アァアアアッ!!」
スミカケの肉体を蝕んでいた崩壊エネルギーが光り輝いたのちに暴走し、激しい電流と共に彼を痛めつけた。
それはまるで、拷問のようで。
「スミカケッ!!」
ゴーグルはすぐに【アンクル:コバルト】を撃ち込もうとしたが、すぐに手が止まった。
ここで撃ったら、スミカケを傷つけてしまう。
(どうすればいいんだ……!?)
スミカケは悲鳴をあげて悶絶している。
はっきり言って、ゴーグルはこの状況を理解できずにいた。
「すみかけ……っ!」
ヒトを呼ぶ前に応急処置としてガクガクと痙攣する彼の体を押さえつけて包帯を巻こうとするゴーグルだったが、強すぎる崩壊エネルギーがそれを拒んだ。
「しっかりして、スミカケッ!!」
「……ぅ、許さない……許さない!」
「──!」
スミカケの目が、紅くなっていた。
ゴーグルが我に返った時には既に彼の青に戻っていた。……と思ったら、また紅に明滅した。
そして、【透明な液状の羽が生え始める】。
「……!」
ゴーグルには見覚えがあった。
千年前、ハイカラスクエア。
……絆の律者。
律者がまた、生まれようとしている。
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もだま(プロフ) - 更新待ってました。今回も文章が上手でストーリーや世界観にぐんぐん惹き込まれました。キャラクター一人一人の感情表現も素晴らしく、話に没頭してしまいました。今回も続きが気になる終わり方でとても面白かったです。これからも無理せずに更新頑張ってください。 (12月22日 23時) (レス) id: 762cea6966 (このIDを非表示/違反報告)
コロ○ - お久しぶりです!上手く言えないのですが、文に、物語に引き込まれます。素敵です。テンションが違いますがコロ○です。展開が気になります。ゆっくりでも良いので更新頑張ってください! (11月2日 22時) (レス) @page43 id: c20130040f (このIDを非表示/違反報告)
時城はるね(プロフ) - 初めまして。この作品、とても細かい設定まであって読みやすいです。絵もとても素敵です。この作品、最高です。これからも無理せずに頑張ってください! (10月17日 22時) (レス) @page37 id: 8e86fe11f1 (このIDを非表示/違反報告)
コロ○ - お久しぶりですコロ○です。受験生の妹に紹介したら、休憩の時にちょくちょく見てるっぽいです。兄妹ファン…憧れだったんですよ。あと絵本当にお上手ですね!すごいです。俺これからモチベ上げる隊になろうかな。続きが楽しみです!頑張ってください! (9月26日 2時) (レス) id: 01a934e3d5 (このIDを非表示/違反報告)
am - こんにちは初めまして。この作品の設定や世界観が凄くてつい惹き込まれてしまいました。次はどんな展開になるかと楽しみです。あとイラストのグローブ君カッコ良くてその他も見てみたいです (9月18日 19時) (レス) @page35 id: c6b1ac05e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるやん | 作成日時:2023年5月31日 20時