真っ赤な金魚 (ページ2)

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その人はいつも中庭の端のちょうど校舎で影になるところにあるベンチで昼寝をしている。
サラサラの金に近い茶髪のノーセット。睫毛の長い目に高い鼻。整った横顔。全てがきれいで繊細で。まるで作り物のようだった。

私がその人にあったのはちょうど1ヶ月前。
高校生になり初めて寝過ごした日だった。その日は焦って学校へ向かった。通ったことのない中庭を通ってみると今日と同じ場所同じ格好でその人は昼寝をしていた。
焦っていたのに急に時が止まったように見惚れてしまった。
カッコいいとかそーゆー感情ではなかった。
初めて感じた感覚。一目惚れだった。

それから私はその人が誰なのかを調べた。
名前は平野紫耀。私の2歳年上の高3の先輩だった。
私の仲のいい友達、優香によるとめちゃめちゃ人気の先輩らしい。そりゃそうだと一瞬で思った。
あんなに見た目がいい人が騒がれないはずがない。
でも紫耀先輩は見向きもしない。話しかけられても素っ気ない態度。どこか寂しい瞳をしているような気がした。

今日も同じ場所で寝ているんだろうなと思ってきたら案の定だった。
少し近寄ってその横顔を見つめた。
話しかけたことなど一度もない。紫耀先輩も私の事など知るはずもない。
もちろん話してみたいし話せたらどんなに幸せなんだろうなと何度も考えたことはある。
それでもこの横顔を、みんなが授業をしている誰もいないこの中庭で独り占めする時間が私にとっては幸せだった。

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