34.暴走 ページ37
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突如現れた白い少女。
漆葉の仇たる呪霊を祓った後も
何一つ言葉を発さず。
場の空気は
ぴんと張り詰めたままだった。
まっすぐ、怖いくらいにこちらを見て。
一秒、
二秒、
……三秒。
ぶわっと呪力が膨れ上がった。
白銀の刀を持った左手を、縦に振り上げる。
「っ!」
勘と運に頼り、
疲弊した体に鞭打って飛び退く。
ガガガッと硬い何かを削る音。
後には、少女からこちら側まで伸びる斬撃の痕が
廃病院の廊下に深い谷を作っていた。
冷や汗が背筋を伝う。
「まさか見境なしか…?」
「らしいわね、あの感じ。まだやめる気なさそうよ」
今までに感じたことない呪力量。
呪力そのものも異質。
未知数で、何より本人の思考が読めない。
確実にあの呪霊より、強い。
詰みか?
いいや、まだ手はあるはず。
せめて、その目的がわかれば_____
「やあ、生徒たち! 生きてるかい?」
一手目。空気をぶち壊す。
「…は、?」
──な、訳があるか。
「五条先生? なんで、ここに」
「なんかヤバそうだから来てみたー。で、無事?」
「……先生、ごめん。漆葉が」
五条は開放的になった廊下の先に立ち
悠仁の訴えに一瞬、雰囲気を堅くする。
「…あぁ、うん。ちょっと意地悪な聞き方だったね」
「先生わかって──!」
「……大丈夫。
にしても、かなり面倒なことになってるじゃん」
「…アンタ、アレのこと知ってんの?」
「いやー、知らない」
「知らないんですか」
「まあ、とりあえずなんとかしよっか」
「なんとかできるの!?」
「僕を誰だと思ってるのよ」
生徒の前へ出る教師──術師が一人。
膨大な呪力をまとう白の少女は
顔色一つ変えずにその男を見ている。
「俺らは何をすればいいんですか」
「Aを、あの子と離してほしい。
僕が気を引いてる隙にね」
頼んだよ、と五条は振り向いて笑う。
それが合図のように
少女の呪力も膨れ、広がり始める。
「あれ、待っててくれてたのかな?
意外と律儀なんだね」
少女は答えない。
五条もまた、返事に期待はしていない。
「さて、始めようか」
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時