31.油断 ページ34
▽
見えない──不可視の呪霊。
想定外のトラブルに見舞われつつも、みんな無事。
ちょっとした奇跡だ。
本当に、何も被害がなくて良かった。
「何よ、なんで笑ってんの」
『…ううん。
みんな強くなってるんだな、って。思ってね』
野薔薇は、はぁ? と言いたげな顔をしつつも
嬉しそうな表情が垣間見える。
「いや、今回は運が良かっただけだ。
おまえがいなきゃ危なかった」
「それな!? 呪霊がいるって漆葉に言われて、
やっと状況把握できたようなもんだし」
『そ、そう? なんか照れるな〜なんて』
あはは、と笑ってみせる。
薄暗い廃病院の中で雑談に花を咲かせる……
なかなか勇者のやることだ。
でも今は、達成感と安心感もあってか
この和やかな空気が心地よかった。
一人で呪霊を祓えた。
頼りにされた。
みんなは怪我もなく、無事。
大団円だ。
今日は、何か自分にごほうびをあげよう、と
思うくらいには。
……だから。
だから?
『でも、どうして私だけに見えたんだ、ろ──』
だから、だ。
浮かれていた。気を抜いた。
……油断した。
『───え』
後ろからの鈍い衝撃。
〈……オマエ、殺ス。アノヒトガ、ソウ言ッタ〉
カタコトな言葉。背後で飽和する呪力。
瞳だけを動かして腹部を見る。
鋭いトゲ…か何か。
それが鳩尾──急所を、一突き。
「…! Aッ!!!」
恵が、三人が振り返る。
血相を変えて。
ああ、
『………めぐ、み』
ダメだ。
他でもない私が。
弱点を叩く、なんて戦い方をしてるから、わかる。
これは、無理。
『──み、んな』
口の中に溜まる鉄の味。
痛い。
でも今だけは、その痛みに耐えて。
耐えて。
なんとか、微笑みの表情を形作る。
呪いは、未練は。
残さないように。
『ごめ……ん──』
存外、あっけない終わりだな。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時