26.空中散歩・転 ページ28
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それから先生はしばし思案して。
短い静寂を、らしくない落ち着いた口調で破る。
「じゃあさ。僕本体は、綺麗かな?」
『は、い?』
質問の意図が理解できず
せっかくそらしたばかりの視線を、また合わせる。
そしてすぐに理解した。
綺麗なままの光を込めた瞳が、こちらを見ている。
無邪気でもなく、戯れでもなく。
ただ穏やかに、それでいて機を窺うような隙のなさ。
だから、あえて。
命知らずにも視線をそらして。
『……いいえ。全然、まったく』
「え、えーっ? そこまで否定する…?」
『逆にどうして肯定すると思ったんですか』
フッと軽くなる場の空気。
表面的なものだ。でも、今はそれがありがたい。
少しだけ残る緊張感に乗せて、思い切りをつける。
『じゃあ私も質問します』
和らげた表情を引き締めて。
今まで聞けなかった、最大の不審点を。
『どうして、結婚なんて話になったんですか』
考えなくてもおかしな話だ。
“あの”五条悟ともなれば、
結婚相手はそれこそ慎重に選ばれるべきだろう。
なんなら婚約者がいたっておかしくない。
それなのに先生は、
何も知らないようなフリをする。
「Aが好きだから。それ以外に理由必要?」
──当たり前のように、そう言う。
『…私が聞いてるのは、そういうのじゃなくて。
私である必要性はあるんですかって話です』
「? あるよ? 好きな人って普通は一人でしょ?」
そうやって、いつもと変わらない顔で言われたって。
『……信じられますか』
結婚の義務から逃げたいだとか、
五条先生が嫌っている上層部への当てつけだとか。
悲しいかな、そういう理由付けの方が
まだ信憑性はある。
信じられる、はずもない。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時