［１］プロポーズされたので呪術師になります【五条悟】

20．懐柔(？) ページ22

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禪「遅かったなぁ、変態教師」

五「ごめんね〜、ちょっと長引いちゃった。
　 …あと真希、その呪具どっから出したの？」

禪「パンダに持たせてて正解だったな」

パ「持ってて正解だった」

釘「ナイスです、真希さん！
　 こっちは漆葉ガードしときますよ」

漆『えっ』


綺麗なフォームで呪具を構える真希先輩。
私の前で両腕を広げている野薔薇ちゃん。
さらに皆、各々の形で眼前に立ち塞がる。

控えめに言ってカオス。


五「これどういう状況？」

禪「自分の胸に聞いてみろ」

五「えー、僕なんかしたっけ」

伏「…Aから話は聞きました」

虎「先生！ 漆葉の誕生日に
　 プロポーズしたって、本当なんですか！？」

五「え？ あぁ、うん。ほんとだよ」

釘「んなっ、この教師しれっと」

禪「随分潔いことだな」

五「んー。ま、逃げられちゃったんだけどね」

漆『…あ』


フッと一瞬、目が合った。

肩をすくめながら唇にのせられた笑みは、
皮肉とほんの少しの落胆を含んでいる。
……ような気がして。

でも、こちらが何かを言う前に
先生はいち早く、高らかに手を叩いた。


五「まあ、それは置いといて！」


あまりにも早い仕切り直し。
置いとけるか、などと反論する間もなく。


五「じゃーん！ これは何でしょう？」


扇のように広げて掲げられたのは
短冊のような複数枚の紙。


虎「先生の見せたかったもんってこれ？」

パ「なんかのチケットみたいだな」

五「その通り！
　 花火大会の特等席チケット、8枚ぶんだよ〜！」


花火大会。夏の風物詩。

呪術師というものは基本的に忙しい。
それゆえ、世間の流れからも置いてかれやすいのだ。
季節ごとのイベントにも縁がなくなっていく。


けれど、今。
繁忙期を経て、任務も鍛錬も一区切り。
短く貴重な息抜きの期間。

魅力的な響きは、いとも容易に受け入れられる。


釘「花火…大会！？」

虎「へー、出店とかあんのかなぁ」


ゆるゆると緊張した空気が解けていく。


禪「……そういや指定席、毎年人気で
　 とんでもなく倍率高いって聞いたな」

パ「権威でなんとかなるもんか？」

狗「おかか」


段々と、浮かれたような雰囲気へ。


伏「…………恐ろしいな」


もどる、もどる。

恵は半ば恐怖しながら
あっという間に懐柔されていく仲間を見ていた。


五「当日はもちろん、浴衣だよ？」


切り札を出した本人はそう言って
楽しみだね、と満足げに笑った。




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