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青春の日を2 皆木綴 ページ6

注文したものが来ると、会話がなくなってしまう。

「…」
俺が1番見たくなかった表情をする彼女に、胸が痛む。
そんな顔、絶対にさせたくなかった。

「これからどうしようか!
パーっとボーリング?
ボーリングと言えばさ、私下手くそすぎて綴くんに
特訓されたよね。
懐かしいなあ。何もない田舎だったから、デートは
カラオケかボーリングだったよね。
卒業してから私の運転でドライブしたら案の定、事故ってさ…
でも綴くん怒らないで、すぐに警察に電話してくれてさ…あ!でも今は上手くなったよ。
今日も車で来たんだから。」

「…もういいから。」

俺が黙っていれば、このまま関係が続く。
優しすぎる彼女は、別れを切り出せない。

「俺たち、もう別れよう。」

「ごめん…ごめんね…綴くん。」

「泣くなよ」

差し出したハンカチを、彼女は素直に受け取る。

「洗濯して返すから。」

彼女にタオルやパーカーを貸したら、いい匂いで
返ってきたものだ。
意味のなく、彼女に恋した高校時代を思い出す。

「いいから、持っとけ。
どうせ帰りの車でも泣くんだろ。」

「綴くん…ありがとう。」

どうせ涙を見るなら、プロポーズをした時に見たかった。
今の俺には、抱きしめる権利もない。

「行くか…」

Aが落ち着いた頃を見計らって、カフェを
出る。

「車、どこに停めたの。」

「駅前の駐車場だよ。」

「やっぱり運転うまくなったんだ。」

あの下手くそな運転にはもう乗れない。

「寮まで乗せてあげようか?」

「いい、そこまで見送るわ。」

カフェから駐車場までの、短い距離。
こうして隣に彼女がいるのも最後だ。

「車、出してくるね。」

少し前の部分がヘコんだ、中古の軽。
卒業旅行と称して、隣町まで彼女の運転で行き、その道中で事故に遭って大変だったな。

どれもこれも、戻らない時間だ。

「じゃあ、行くね。」

運転席から顔出し、手を振る彼女を引き止める事は
出来なかった。

「もう事故るなよ。体に気をつけて。」

「綴くんも、無理はダメだよ。
今までありがとう。」

緩やかなスピードで、俺の帰る道と逆方向に車は
発進する。

俺は彼女の車が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。

3年も続いた恋愛の終わりは、呆気なくて、別れたという事実をすぐには受け入れられなさそうだ。

いつか会えたら シトロン→←青春の日を 皆木綴



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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年3月10日 11時

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