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小さくノックの音がして身体が跳ねた。
「は、はい…」
座ってた椅子から立ち上がってドアの方に向くと、
ゆっくりと開かれたドアの向こうから少し緊張した表情のドンヘが顔を覗かせた。
イブニングドレスの私に合わせて、久しぶりに見るドンヘのタキシード。
やっぱりうちの旦那様はいつ見ても素敵で、思わず見惚れる。
「A…」
あんぐり、口をあけたドンヘが小さく息を飲んだのがわかった。
「変…じゃない?」
「え…ぁ、いや、どうしよ…」
「え?」
ゆっくり近づいたドンヘが、そっと私を引き寄せて。
まるで触ったら壊れてしまう飴細工にでも触れるように優しく私を胸に抱く。
「ドンヘ…?」
「やばい……このまま部屋に戻ろうか…」
耳元に寄せた唇が擽ったくて思わず身を捩ると、追いかけるように項にドンヘの唇が触れて……
「………っ、ドンヘ…」
「そんな声出すなよ、止まらなくなるだろ…」
「バカ……(照)ディナーに連れて行ってくれるんじゃないの?」
「うーーー、やめときゃ良かった……部屋にルームサービス、取る?」
「え〜?せっかく綺麗にしてもらったのに?」
少しドンヘの胸を押して、甘えるように下から見上げると困ったように笑って。
「ごめん、あんまり綺麗すぎて……行こうか」
「ん……」
ドンヘの脇に添えた私の手をドンヘの手が持ち上げてちゅっとキスをして
繋いだままで、部屋を出た。
繋がれた手が、そっと角度を変えて指が絡まる。
絡んだ指の1本1本が熱を持っているようで
その熱に、少しずつ体温が上がるのがわかる。
ねえ、ドンヘ…本当はね。
私だってこのまま、部屋に戻ってドンヘと甘く溶け合いたいよ。
だけど…
もう少し、この夢のような時間を味わいたい。
きっと、家に戻ったら子供たちの母親に戻ってしまうから。
少しだけ、ドンヘだけの私で居させて欲しいの。
絡められた指にぎゅっと力を入れたら、それに気づいたドンヘが
振り向いてフッと優しく口元を緩めた。
ああ、その顔…
今すぐに引き寄せてキスしたいなんて。
きっとそれを口にしたら、あなたはこのまま部屋に戻ってしまうわよね。
だから言わない…
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ひまわり(プロフ) - 一気に読ませてもらいました!心が温まりました!私もお話を書き始めたばかり。こんなステキな話を書けたらいいな♪ (2014年12月30日 15時) (レス) id: 595a038cb0 (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - ようこさん» ようこさん、コメントありがとうございます!コメントが届いても通知が来なくなってしまって気づくのが遅くてすいません。そう言ってもらえてうれしいです(≧∇≦) (2014年9月2日 6時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
ようこ(プロフ) - どれもこれも楽しくわくわくしながら読ませていただきました。 (2014年7月30日 16時) (レス) id: 12ac2e3c23 (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - pukapuka_mickyさん» きゃー、もしかしてえ○こちゃん?だよね?コメントありがとう〜\(^o^)/そう言ってもらえて嬉しい!うんうん、生まれ変わってドンヘみたいな人と巡り会いたい!! (2014年5月18日 10時) (レス) id: 2dade049d6 (このIDを非表示/違反報告)
pukapuka_micky(プロフ) - 素敵なお話ありがとう♪とっても幸せな気持ちになったよ。生まれ変わったらこんな素敵な旦那さまと巡り会えるかな。。 (2014年5月17日 21時) (レス) id: 9877638046 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくらこ | 作者ホームページ:http://id41.fm-p.jp/390/cherryhae15/
作成日時:2014年2月10日 21時