記憶 ページ14
紅葉side
薄ら笑いの前任は
紅葉切国護月彦《私》を顕現した
本霊は憐れみを零してくれたものだ。
本丸は既にぼろぼろ
刀剣達をも折れそうである。
そんな一月に顕現されたのは不運としか言えない
そんな時、
一つ思ったのが対価交換。
一つ言うことを聞く代わり
一振りの手入れを。
万が一誰か折れた時用と自分が折れた時用とに
霊力を溜め込み
前任に交渉を持ちかけた。
ある意味成功したと言えるが
ある意味失敗した。
短刀の出撃頻度は増える一方で。
ほかの刀剣男士達も休まずに出撃。
ふた振り目以降はすべて自分自信に折らせる
レア度の高い刀剣はする頻度自体低いが
私の場合
嫌がった子の代わりにふた振り目以降を折った
私のほかに一年目で折れた刀がいないなど
嘘でしかない。
三月になれば三日月も一期も顕現し、
過度な出陣が目立ち始めた。
私の介入の余地など無く
悲嘆に暮れた。
此れは七月ごろからか。
私自身、手入れなど受けていなかった。
攻撃してくる敵を折って
ただ攻撃を受けなかったのだから。
短刀達夜戦組が帰還すれば
今度は私が一人で出撃。
敵を屠り、
嘲笑い、返り血を浴び赤く染まって帰還
バレないように身体を洗えば
もう夜明け。
朝食を食べ
前任の実験に付き合わされ
昼食、
出撃して帰還。
夕食を作り、食べて
湯浴みし、時間まで書庫で本を読んで
外で遭遇するように調整。
ーーーそれを十一月までずっとしていた。
それまで一睡も無しでは流石に応えた。
普段通りに身体が動か無くなり
ついにあの日。
たまたま、
出撃が無いからと他の刀剣の手当てをしようと
本丸を回っていた時
誰も部屋にいなかったのだ。
嫌な予感がして大広間に走り
襖を開けて
前任を睨む。
足元には、長谷部がいた。
殴りつけていたと直感でわかる程にぼろぼろの
長谷部が。
下賎な笑みを浮かべた前任は
長谷部に対し次にこう言った
腹を切れば他の刀剣にはもう手は出さないと。
嘘だと思った
壁に張り付いたままの他の子達も
殴られた跡があった。
頭の中で何か切れたとおもえば
前任を蹴り倒していた。
この時の本丸最年長の意地だったのだろうが
勿論前任は吹っ飛ばされ
驚きの声が聞こえた。
腕力は無くとも
脚力がある
前任は簡単に飛んだ。
本体を鞘ごと一期に渡して
廊下に転がり出た前任を一瞥した。
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作者名：クラウン | 作成日時：2018年9月15日 22時
