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«りょうへいパパ»
「うるせぇな、クソババア」
息子からその言葉を聞くとは、人生感慨深いものだ。
いつかは来ると分かっていた反抗期。
少しチクッと痛かったけれど、それ以上に横にいる亮平くんがガチギレしてるから冷静になれた。
「は?」
「お前、誰になんて言った?」
いつもはとても温厚な父。
きっと彼は初めて相対するのだろう。
激おこ亮平くん。いつもの比じゃない、こわーーーい亮平くん。
ほら、息子。顔が引き攣ってる。
ごめんね、母さんにもいい思い出はないから何も言わないよ。
「なあ?」
「…すいませんでした」
謝罪をちゃんと私に言うあたり、我ながらよく出来た息子だと思う。
「反抗期王に!俺はなる!!!!」
高らかに宣言した私を亮平くんは笑って、息子は訝しげに見つめた。
「じゃじゃーん」
寝室の机の引き出しから紙を引っ張りだしてきて、息子に見せる。
ポカンとした息子。怒りはどこかにいったようだった。
「なにこれ」
「反抗期届け」
「父さんとね考えたんだあ〜」
ずっと昔。
確か5年くらい前。
ふと遊び感覚で2人で作ったそれは印刷され、大事にしまわれていた。
「我が家の新ルールです。反抗期に入るなら、届出を出すこと!」
ふふっと、亮平くんが笑う。
懐かしいでしょ。ちゃんととっておいてあったんだよ。
「口出しされたくないことや、交渉したいことをここに書いて提出してください」
「要望が通るかは交渉次第だけど、父さんも母さんも、キミがこの家で快適に過ごせるように善処します」
「なお、注意事項と禁止事項もあるからね」
ちゃんと見ろよ?と亮平くんは念押す。
作る時も、これは絶対いる!って譲らなかったなぁ
「サインしたら、反抗期ってことで〜」
「…なにそれ」
ふふっと息子は笑う。
笑い方や笑った表情がとても亮平くんに似てて、血の繋がりって面白い。
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「楽しかった?“カノジョ”とデート」
家族会議の後、こっそりと母さんが俺に耳打ちする。
「でもねまだ成人もしてないんだから、“カノジョ”のためにも早めに家に帰してあげなさい。夜は遅くなりすぎないこと。分かった?」
「…はい」
なんで、バレてんの?
俺の両親揃いも揃って、少し抜けてて変な人たちなのに、なんか怖いんだけど。
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嫁のことになると息子でも容赦しない黒阿部降臨してくれ。
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作者名:午前12:00 | 作成日時:2022年10月2日 23時