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「なんかね、ビビッときたんだよねぇ」
出会った頃の話をすると彼は毎回そう言う。
「なのにお嬢さん、最初ぜんぜん感じてくんなくてほんと焦ったんだから」
ベッドの上。
私の前髪をかき分けて、そのまま頭を撫でられる。
反対の腕は、私の身体を抱き寄せて直に体温が伝わった。
「その前にシた人のせいだね。あれはやばかった」
「へぇビッチ」
「人のこと言えない癖に」
「でも今は俺しか見えないっしょ?わら」
目を細めてニヒルに笑う口元。
無駄にかっこいいから、嫌いだ。
頭大きいバケモノなのに。
「俺の事だいすきだもんねぇ」
「…さぁね」
薄い唇に自分の唇を近づければ、彼は細い目を伏せた。
舌で何とかこじ開けて、歯列をなぞり深く深く彼が感じるところを責める。
っ、
窒息音と共にもれる吐息
何度も何度もされたせいか、おかげか、だいぶと上達したはずだ。
「深澤の辰哉くんも、もう私でしか満足できないでしょ?」
「ふはっ、よく分かってんじゃん」
でもね、
耳元で彼は笑った。
「まだ下手くそ」
噛み付くような、全てを包み込む優しさのような、よく分からない彼のキス。
溺れたら負けだ、
分かっていても溺れたくなってしまう
“相反する感情”
1回戦目の汗で少し濡れた彼を引き寄せながら
__結局今日も気づかないフリをして、やり過ごす
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作者名:午前12:00 | 作成日時:2022年8月26日 21時