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「照、そこの会社のコンペ何で行くの?」
「あー、それねコレにしようと思う。はい資料、見る?」
感謝を述べ、手渡された資料を受け取り自席でササッと目を通す。
綺麗に纏まっているなぁ
へぇさすが照
同期で一番仕事ができると言われるだけある
ふと、ページを捲る手が止まった。
顔をあげれば彼と目が合う。
終わりがけのページ。挟まっていた写真と1枚のメモ。
“康二に知られたくないよね?”
写真に写るのはシゴト関係の人とホテルに行く私。
身に覚えもあれば、写真も言い逃れできないほど「私」を撮していた。
“何が望み?”
「ありがとう、助かった」
「いーえ、役に立てば何より」
資料を返す時に挟んだメモ。
ちらりと見れば読んだ様子で、クイッと普段ミーティングで使う空き部屋を指さされた。
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「A、今日の予定は?」
「あるけど」
康二と付き合って1年。
盛大に祝うのだと、彼が晩御飯の仕込みをせっせとしていた。
「残業、手伝ってよ」
「…それ、は、」
その含みのある言い方に、気づかないほど馬鹿じゃない。
「拒否権あったっけ」
有無を言わさぬ圧。
近づいてくる身体は男らしく、康二よりも厚みがある。
後ずさりしていたけれど、結局最後には壁にぶつかって逃げ場はなくなった。
横に伸ばされた両腕が退路も閉ざす。
「康二には俺から言っといてやるよ」
近づく顔。
背けても、手で強引に向けられた。
「っん、っ、」
パシャリ
目を横に向ければ、照の手とスマホ。
撮られたという事実を示すには明らかすぎる証拠。
「っ卑怯、」
「なんとでも言っていいよ」
ははっと乾いた笑い。
照のクシャッとした笑顔が好きだったのに、それじゃない。そうじゃない。
あぁ、
そうさせたのは、私のせいなのだろうか、
「んじゃ、また後でね」
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作者名:午前12:00 | 作成日時:2022年8月26日 21時