・ ページ2
.
蓮と出会ったのは、半年前。
地下のバーだった。
好きな人がいてその好きな人が結婚したのだ、と。
「あー殺してやろっかな」
なんていって、薄く笑っていた彼。
狂気を孕んだ目。その目にかかる重い前髪。
「好きな人の幸せくらい祝えるヤツになりたかったんだけど」
苦しそうに、半ば諦めと悔恨と苛立ちの含む表情。
彼は1席空いた隣でマスターに向かって独りさみしげに笑っていた。
「そんなの、無理でしょ」
「…干渉してくんなよ」
「だって人って利己的だもの。」
向けられた敵意を気にせずに隣に座れば、案の定嫌そうな顔をされた。
「自分が大切で、自分のことしか考えられないの」
グイッとショットを煽ると、漸く興味を持ったみたいで、目が合った。
「それでいいんだよ」
それが、いいんだよ
じゃないとさ、壊れちゃうよ。
「ねぇ名前は?」
「A。キミは?」
「…レン」
あぁ。
蓮とのはじまりは、こんなだったっけ?
73人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午前12:00 | 作成日時:2022年8月26日 21時