鬼にして鬼にあらず ページ33
「蝶屋敷に運ばれて、面会謝絶で、それでもずっと待っていた!あの時と今回のお礼が言いたかった!」
たしかに、今まで治療で面会謝絶でもぽっと出で、しかも自分を庇った奴の顔を知りたいとは思うわな。
まって面会謝絶級の重体のやつがもう平気で鬼ごっこしてるってだいぶ怪しまれない?
1回自分で口にしてみると矛盾に気がつくように竈門くんも気がついたようで、口をキュッと結び何かを考えはじめた。
「鬼の音がする」
我妻くんがぽそりと呟いた。
竈門くんが我妻くんを振り向いたのを見た。
軽蔑されるだろうか、おかしいと言われるだろうか。
そんな当たり前だと言い聞かせたものを予想しながら次の言葉をまつ。
「でも、ねずこちゃんと一緒なんだ。優しい音がする」
妹さんと同じ、か。
「優しくて、柱みたいに強い独特な音がする。鬼の音なら禍々しくて当たり前なのに、あなたは違う」
我妻くんが紡ぐ言葉に感動を覚えた。
「俺は強くなりてえ!」
横から飛んできた言葉に思わず笑う。
「強いと思っていたのにもっと強い奴らが現れて、そんで俺は」
だんだんとは気がなくなっていき、最後の科白、何もできなかった、には悔しさとやるせなさが滲んでいた。
「だから強いあんたと会ってそんで勝負して欲しい!強くなりてえ!守られる存在じゃなくて守る存在になりてえんだ!!」
ぐっと、心臓を掴まれる。
そんな感覚がした。
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作者名:重刄 | 作成日時:2020年10月24日 12時