番外編 その４ ページ44
〖44.95 願い〗
【マレウスside】
その日の夕方、
僕はオンボロ寮前にあるベンチに腰をかけ、
Aの帰りを待っていた。
マ「外泊届は出していなかったから、
そろそろ帰ってくるはず…」
すると、オンボロ寮のゴーストが
僕に話しかけてきた。
マ「僕になんの用だ？」
「それはこっちの台詞だ」
「オンボロ寮に何か用事でもあるのか？」
マ「Aの帰りを待っている」
マ「手紙を渡したくてな」
「手紙ならポストに入れておけばいいんじゃないか」
マ「直接会って渡したいんだ、どうしても」
僕がそう言うと、
ゴーストはオンボロ寮の中に消えていった。
しばらくすると、
遠くの方にトランクを持ったAの姿が見えた。
どうやら用事を済ませてきたらしい。
マ「……………っ」
僕はAに手渡すつもりだった手紙を
オンボロ寮の玄関前に置いて、
木の影から様子を伺うことにした。
Aは僕が置いた手紙を手に取ると、
上着のポケットにしまい、
そのままオンボロ寮の中に入っていった。
「なんで直接渡さなかったのだ？手紙」
マ「！？」
僕のすぐ横に先ほどのゴーストがいた。
まったく気配に気がつかなかった…。
マ「…急に怖くなってな」
マ「それに…
彼女、このあと予定がありそうだったしな」
「ハーツラビュル寮の夕食会に呼ばれているらしい」
マ「…そうか」
しかし…
僕がこんなに近くにいたというのに、
Aは全く僕の気配に気づいていなかったな。
きっと僕の気配よりも、
ハーツラビュル寮の夕食会に行くことで
頭がいっぱいだったのだろう。
ガチャ！！！
オンボロ寮の扉が勢いよく開き、Aが出てきた。
そして、
もの凄いスピードで僕とゴーストの前を
通り過ぎていった。
僕はゴーストに挨拶をして、寮に戻ることにした。
寮に戻る途中、
ふと空を見上げた時、ちょうど流れ星が見えた。
流れ星を見た時は願い事をすると良い、と
昔リリアがよくシルバーやセベクに言っていたな。
マ「願い事か…」
僕が今一番望んでいること…
マ「Aともっと一緒にいられますように」
Aは将来自分の運命と
向き合わなければならない時がやってくる。
そしていずれは…
"その時"が来るまで、
できるだけ彼女の成長をそばで見守りたい。
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作者名：ひとみ | 作成日時：2020年6月18日 9時
