Episode.37 ページ37
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春休みのある日。
ミドルスクールの女友達の家に遊び行った時だった。
「…ねぇねぇ、Aちゃん。
Aちゃんのご両親って妖精族なんだよね?
なんで、Aちゃんは妖精族の耳じゃないの?」
妖精族は見た目は人間とほぼ同じだ。
でも耳の形が少々異なる。
妖精族の耳はとんがっているのだ。
確かに私の耳は妖精族の特徴的な耳ではない。
…なぜ?
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数日後。
私は女友達から言われたことを
両親にそのまま伝えた。
すると、お父様が
「少し待っててくれ」と言い、書斎に向かった。
お父様は書斎から厳重に施錠された箱を持ってきて、
机の上に置いた。そして、呪文を唱え始めた。
呪文を唱え終えると鍵は消えた。
箱を開けると、中には沢山の書類が入っていた。
『これは?』
ヴェ「貴女の本当のご両親や生まれた土地の情報よ」
ヴェ「私とヴィンセントはAの育て親なの」
ヴェ「今まで黙っていてごめんね…」
『…この箱、貰ってもいい?』
ヴィ「いいよ。
この箱はいずれAにあげるつもりだったからね」
『ありがとう、お父様』
私はそう言いながら、魔法で箱に火をつけた。
ヴェ・ヴィ「!?!?!?」
両親は炎に包まれる箱と私の顔を交互に見た。
『昔マレウス様に読書が好きってお伝えしたら、
王宮の書庫へのアクセス権を下さったの』
『こんな形で使うことになるとはね…』
ヴェ「A…」
私の本当の両親や祖国の情報を
手の届くところに置いておきたくない。
私の中に残ればそれでいい。
私は灰になっていく箱を黙って見つめた。
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作者名:ひとみ | 作成日時:2020年6月18日 9時