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それは突然だった。
この時代に来て半年は経っただろう。
いつもの様に無惨くんと寝ていると、奇妙な感覚に目が覚めた。
確かめる為に起き上がると、足の先が消えかかっていたのだ。
あぁ、誰かが鬼を倒してくれたのか。
漸く帰れると分かった時、隣で寝ている無惨くんの事が気になった。
贔屓目なしに彼は俺の事を気に入ってくれている。それが友情なのかお気に入りのおもちゃ扱いなのかは分からないが。
俺が居なくなったら、きっと寂しがるだろうな。
もちろん帰らないという選択肢はない。
お師匠さまや獪岳がきっと心配してくれているだろうし、俺は本来ここに居るべき存在ではないから。
寝ている無惨くんを見ていたらふと、俺の中の何かが問いかけて来た。
ここで鬼舞辻無惨が居なくなれば悲しみの連鎖を元から断ち切る事が出来るぞ、と。
このままでは近い将来無惨くんは鬼になってしまう。
そして、様々な人が嘆き、苦しめられるんだ。
俺が今、無惨くんを殺せば…。
「…出来ないよ」
だって今の彼は人間だ。
よく怒って、笑う。寂しがり屋の唯の人間なんだ。
彼が病で苦しむ姿を見た。
俺の話を聞いて嬉しそうに笑う姿を見た。
側から離れるなと寂しそうに言う姿を見た。
彼は、俺にとっても大事な存在になってしまったのだ。
こんなことなら…。
こんなことなら彼を鬼舞辻無惨だと気付いたその瞬間に殺せばよかったのかな。
同じ月日を過ごし、情が移る前に殺してしまえば…。
「殺さないのか?」
「?!……起きてたの?」
突然話しかけられて驚く。
俺が起きる気配で目が覚めてしまった様だ。
でも、今彼は一体何と言った?
「私を殺さないのか?」
「なん…で」
聞き間違いじゃあなかった。
ゆっくりと上体を起こす無惨くん。
その目には恐怖や焦りは抱いてなかった。
「お前が現れてから最初の頃は、お前から僅かな殺気が出ていた。やはり私を殺しに来た妖だったかと、何度思ったことか」
「…………」
「まぁ暫くしたらその殺気も無くなっていたから、気のせいかと思ってはいたが…気のせいではなかった様だな?」
楽しそうに言う無惨くんに、言葉が出ない。
そんな事ないって言いたい。
でも、確かに俺は考えてしまったのだ。彼(鬼)が居ない未来を。
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河岸エマ(プロフ) - 爽雫さん» うわあぁ私も大好きです!設定を上手く活かせてない気もしますが頑張ります!!モチベめっちゃ上がりました!ありがとうございます!! (2020年2月24日 14時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
爽雫 - 童磨の息子なんて神設定じゃないですか!?凄い続き楽しみです。更新頑張って下さい!応援しています!!だいすきです(*>∀<*) (2020年2月24日 14時) (レス) id: c8b0ff9423 (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - お虫さん» ありがとうございます!近々更新すると思うのでまたよろしくお願いします! (2020年2月23日 23時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
お虫 - 好きです!次の更新楽しみに待ってます! (2020年2月23日 7時) (レス) id: 2f9884d86e (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - アンちゃんさん» マジですか?!それは嬉しいです!pixivでもこちらでもよろしくお願いします!! (2020年2月15日 21時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:河岸エマ | 作成日時:2020年2月15日 16時