【歌い手】獣人世界【男主】 (ページ15)

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『いいかそらる。フードだけは絶対とんなよ。』

「分かってる。」

「あ、A。そこの路地裏らしいよ。」

傍から見れば子供誘拐してるみてぇだな俺ら

なんて考えはさておき

俺達は薄暗い路地裏に足を踏み入れる

進んでいくと何人か獣人のホームレスがいた

この国は獣人が統べているが全ての獣人が裕福なわけじゃない

俺はその格差を無くすため、また、人間と対等な関係を築いていきたくて親父に反抗した

その結果がこれだ

しばらくは王都に足を踏み入れることを禁じられた

いずれ王になる器なのだからと

その時に付いてきてくれたのが天月とSouだ

あいつらは元は騎士だった

それを放棄してでも付いてきてくれた

心強い仲間だ

『おい、そこの者。はした金じゃないが受け取れ。』

「き、金貨...！？あ、ありがとうございます！！ありがとうございますっ...！！」

そう言って金貨を貰った獣人は走っていった

さらに奥へ進んでいくと少し開けた場所に出た

そこにはダンボールが所々に置かれ、誰かが住んでいるようだった

『誰か...いるのか？』

すると一つのダンボールから何かが出てきた

耳も尻尾も付いていない

つまり、

『人間...か？』

「...だれ？」

よく目を凝らすとそこには

黒い髪で一部毛先が白くなっていて

そらるより少し高い背

殺意のこもった目をして

明らかに、俺達に敵意を向けている

『俺はA。お前は？』

「...るすやけど。あんたら、なんのよう？」

その人間はるす、と名乗った

『じゃあ聞くがるす、お前が王都で金盗んで獣人殺してるって本当か？』

「そうやけど。なに、ふくしゅうでもしにきたん？だったらおれ、まけるきせんよ。」

ナイフを取り出するす

『いや、違う。お前、このままだと捕まって売り飛ばされちまう。だから、俺ん家に来ないかって勧誘だよ。』

「は、それで行くと思ってるん？」

『思わない。だから勧誘っつったろ。お前が来る気ないなら無いでいいんだよ。ただ、無駄に傷つく人間を見たくなかっただけだ。』

「いみわかんない。おれはいかへんよ。じゅうじんにかわれるくらいならしんだほうがましや。」

るすの目は、光が宿っていなかった