エスプレッシーヴォ 3 【九条天】

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「挑戦者は女性アイドルの女王、如月あるとさん。去年勝っている相手ですが心意気は？」

如月あると。幅広く活動する人気の女性アイドル。去年はあまり好調ではなかったようで、初出場のDólceが勝利を納めたのだ。


「人気も実力もある先輩なので、私たちも挑戦するような気持ちで臨みたいと思います」

実緒の言葉にAも続けて口を開いた。

「勝ちます。私たちの全てを懸けて」

「かっこいいね！熱い闘志を感じます。それでは、お願いします！Dólceで『with you』」


イントロが流れ出す。

意識しているわけではないのに、身体が躍りだす。

ダグラスの言う通りだったなとAは密かに感じた。

熱くて眩しいスポットライトも、見入るような観客の視線も、反響する自分たちの声も、ステップを踏む音も、隣で踊る仲間の存在も、全てが気持ち良くて楽しい。

(…本当に、夢みたいだね。A)

(そうかもね。だけど、ちゃんと目を開いて踊れるよ。だって夢は見るものじゃなくて叶えるものだから)

(あはは、流石A。かっこいい！)

実緒とAの視線がぶつかる。

お互い、なんて言っているのかわかる気がした。


「Dólceもすごいな……。本当に夢心地っていうか、魅了されてる感じだ」

三月の言葉に周りも頷く。

「Aさんの歌は七瀬さんの歌に似ています。人の心に直接語りかけるような、力強く伝わる歌声」

「兆野実緒さんもすごいよ。動きや視線の全てに惹きつけられる」

「億宮は歌だけじゃなくてダンスも上手いよな。存在感っていうか…華がある」

IDOLISH7も、観客と等しく魅了されていた。


瞬く間に終わってしまったステージ。
名残惜しい感覚と、やり切った達成感が交差して不思議な気持ちになった。

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