エスプレッシーヴォ 3 【九条天】

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「……TRIGGER、負けちゃったね……」

実緒の言葉にAは黙った。

TRIGGERとIDOLISH7の戦いは、僅差ながらIDOLISH7が勝った。
どっちが勝ってもおかしくない戦いだった。


「……行こう。私たちの番だ」

「そうだね。円陣組む？」

「2人で？」

「美咲さんも一緒に」

3人で組むのもどうかと思うけど、とAは笑った。
実緒は、思ったよりも普通な様子のAに拍子抜けした。仲のいいTRIGGERが負けて、少なからず悲しんでいると思っていたから。

「TRIGGERが負けたからって、私たちが落ち込む必要はないよ。彼らよりいいパフォーマンスをしてやろう」

自分の心を読んだかのようなAの発言に実緒は目を見開いた。そして、笑った。

「あはは。本当にAはこういう時だけ好戦的になるね」

「アドレナリン放出してるのかも。……円陣組もうか」

そう言ってAは美咲のいる方へ駆け寄った。実緒も慌ててついていく。

美咲に事情を話すと、3人で円陣を組むのかと笑われたが快くやってくれた。


「お次は女性アイドル部門、去年の勝者Dólce！」

「行ってらっしゃい」

ミスター下岡の声が聞こえてAたちはステージに駆け出す。後ろから聞こえる美咲の声に振り返って手を振った。


☆☆☆

眩しい。

ステージに立った瞬間の感想はそれだった。

いつもより早めの心拍数が心地よくさえ感じる。


「Aちゃんー！！」

「実緒ー！！」

ファンからの歓声が聞こえる。
自分たちの名前を全力で叫んでくれる姿に、力をもらった気がした。


「すごい歓声だね！！2人も、新曲を発表してくれるんですよね？」

ミスター下岡の質問に実緒が答えた。

「はい。Aがこの日のために全身全霊で書き上げた最高の曲です」

実緒の言葉に嬉しくなるA。自分の曲を仲間にそう言って貰えて、嬉しくないはずがない。

「さっきのTRIGGERの曲もAちゃんが書いたんだって？」

ミスター下岡の言葉に観客が反応する。新曲の発表は今日だったからこのことはまだ公表されていないのかとAは思い出した。

「はい。でも、あの曲が完成したのはTRIGGERが歌ってこそですから。…私たちはDólceが歌う、彼らとはまた違った魅力のある曲で臨みたいと思います」

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