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「A！ドラマ決まったわよ！！」
自身のスマートフォンから聞こえるその大きな声にAは呆れたようにため息をついた。
「また美咲さんは独断で仕事決める…」
「いいじゃないの。主演よ、主演」
確かに、ここ最近はドラマとは無関係の日々を送っていた。元々Aは感情的なタイプではないため、ドラマよりも音楽番組の方が親しみがあった。
音楽番組に引っ張りだこで他の仕事をしている余裕がなかったのは、その圧倒的歌唱力も関係していたかもしれない。
「まぁ嬉しいけど。何のドラマ？」
「サスペンスドラマ『ネメシス』よ！」
「nemesis…義憤と復讐、天罰？」
英語に堪能なAはその言葉の和訳を幾つか挙げる。
Aの言葉に、美咲は発音がいいのが腹立つわね…と小さく呟く。
「主演は二階堂大和と億宮A。謎の毒物ネメシスに侵された余命3ヶ月の主人公がネメシスを開発した組織に復讐をしていく…。Aは主人公を追いかける女記者役ね」
詳細を読み上げていく美咲にAはへえ、と相槌を打った。
「楽しそうだね。悪の組織役じゃなくて残念」
「貴方時々サイコパスじみたこと言うわよね…」
「そう？」
「でも残念ながら、Aの役はラブストーリーメインよ」
「え」
「二階堂大和との」
その言葉にAは黙った。正直、恋愛ものは苦手なのだ。
「まぁ、大筋はサスペンスだから大丈夫でしょう」
Aはその美咲の言葉を信じることにした。
「主演なんでしょう？新曲とか作らなくて大丈夫？」
「それが小鳥遊プロダクションに先を越されちゃってね…主題歌取られちゃったのよ」
美咲のその言葉に、売り込みが早いなとAは苦笑した。
「そういう訳だから、明日台本を渡したいから事務所に来て頂戴。明日は実緒に着くから」
美咲のその言葉に了解です、と返した。
「あと、サウンドシップも近いんだから身体を大事にね。暖めて寝るのよ」
「言われなくても。美咲さん、お母さんみたい」
「うるさいわね！切るわよ？」
「はーい」
通話を切ってベッドに潜る。
主演ドラマとサウンドシップ。
大きな仕事に胸を高鳴らせながら。
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作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年4月25日 19時
