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「あ、楽」
「Aじゃねえか。今日は収録か？」
「うん。楽も？」
「ああ。今日は音楽番組で…。あ、そうだ。このあと時間あるか？」
「うん。今日はもう終わり」
「それなら楽屋寄ってけよ。渡したいモンがあるんだ」
バラエティの収録後、テレビ局の廊下で楽に会ったA。
渡したいものに疑問を持ちながらTRIGGERの楽屋に入ると、中には天と龍之介がいた。
まあTRIGGERの楽屋だから当然なのだけれど。
「A、どうしたの」
「ちょっと楽に呼ばれて」
楽は楽屋にあったケーキを見て尋ねた。
「なんだ、このケーキ」
「レコード会社さんから、お祝いのケーキだって」
「へえ…」
そう声を漏らしてイチゴだけ食っていいかと聞いた楽に天は行儀悪いと叱咤する。
「まるまる残すよりはいいだろ。なんだよ、不機嫌だな」
「2人とも、あの曲で1位取って嬉しい？」
天のその言葉で、Aは数日前の会話を思い出した。
「気に入らないのか？俺は好きだぜ」
「いつもと感じが違って、最初は照れくさかったけどね」
「……IDOLISH7の曲と、似てると思わない？」
天はそう言ってAに視線を向けた。
確かに前、Aと天は同じ会話をした。天の視線にAは小さく頷いた。
「あいつらの？そうだ…あのセンター、おまえの弟だって？」
Aは楽のこの言葉に小さく声を漏らした。
そうか、身内だと言うことは知っていたけれど弟だったのかと驚いた。
確かに、彼の歌い方は天に似ているとは思っていたのだが。
「そうだったのか！」
「双子だって。似てないよな」
2人の会話に天が苛立っているのに気付いた。天は自分の話をすることが好きではないから。
どうでもいいと言う天に良かねえだろと楽は返す。
「話しがってたぞ、あいつ。なんで、おまえが家族を…」
「知らないよ」
「…家族に対して、そういう言い方は冷たいんじゃないか」
「もう弟じゃない」
楽と龍之介の言葉にそっけなく返す天にAは胸が痛んだ。
Aも、同じだから。
家族の存在をなかったことにして、ここまで来たから。
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作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年4月25日 19時
