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「この曲かな」
そう言って曲を弾き始めるA。確かに、それは紛れもなく自分たちの曲だった。
「ここで聞いてて覚えたのか？」
「そう」
銀髪の青年は興味深そうにAを見つめる。
「へえ。君、名前は？」
「A」
「僕は千斗。ユキでいいよ」
「俺は万理。バンって呼ばれてる」
「千斗さん、万理さん」
「話聞いてた？」
Aのマイペースさに万理はくすくすと笑う。誤解されやすい千斗の、良い相手になってくれそうだ。
「ねえ、他には何が弾けるの？」
万理の質問にAは少し悩む素振りを見せた。
「うーん…千斗さんと万理さんの曲は多分大体弾けるよ」
「弾いてよ」
「このギター、アコースティックだからチョーキングしにくい」
「エレキギターも弾けるのか？」
あまり他人に心を開くことがない、気難しい千がここまで他人に興味を持つことは滅多になく、万理は何だか微笑ましい気持ちになる。
「うん。…あ、あの曲ならこのギターでも弾きやすそう。Aマイナーのバラード」
すう、と小さい口で息を吸った少女の姿に二人は目を奪われた。自分たちも容姿が良い方だと言われ、なんとなく自覚はあるものの目の前の彼女も大概だ。憂い気な表情や穏やかな話し方は自分たちと同い年だと言われても信じてしまうような大人らしさがあるが、骨格はまだ成熟しきっていない女の子のそれだ。身長もそれほど高くない。小柄な中学生といったところだろうか。もっとも、女の子の身長や骨格に詳しいわけではないので正確なことはわからないが。
そんなことを思っていた万理だったが、彼女の歌声を聴いたときには、そんな予想はもう頭から消えていた。
地球の裏側まで届きそうだと思うほど、よく通る軽やかな、それでいて力強い歌声。透明だとも鮮やかだともいえる不思議な声色。年齢ゆえの粗削りさはあるものの、それさえも魅力的だ。未完成さは時に何にも代えられない価値を持つ。とにかく、すごい才能だ。
「…どうかした？」
歌い終わっても何かを考え込むようにしてこれといった反応を示さない二人に内心で焦る湊。表情の起伏が乏しく感情が読めないと言われることの多い湊だが、中身はちょっと他よりも大人びているただの子どもだ。人並みには焦ったり、驚いたりもする。
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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» ありがとうございます〜！こちらはかなり不定期更新となってしまうと思いますが、本編共々よろしくお願い致します！ (2020年5月30日 6時) (
レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - 番外編…！ありがとうございます！！楽しみにしています！！ (2020年5月29日 23時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年5月28日 21時
