一億光年先にある.1 ページ18
(※過去編。一部Re:memberのネタバレを含みます。)
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冬が好きだった。
寒いのは嫌いだし、冬にあまりいい思い出はない。あるのは、どうしようもない虚無感と、心の底から冷やしていくような孤独だけ。それでも、私は冬という季節がそれほど嫌いではなかった。
それはもしかしたら、ある種のシンパシーのようなものだったのかもしれない。底抜けに明るい夏よりも、生の影が消える冬の方が、私の性に合っているような気がしたのだ。
寿命が八十年だと仮定すると人は一生に八十回の冬を過ごすことになるけれど、この数が多いのか少ないのか、私にはよくわからない。
中島敦の言葉にこんなものがある。
”人生は何事もなさぬにはあまりにも長いが、何事かをなすにはあまりにも短い。”
八十回という数は、冬を楽しめる人にとっては少なすぎるけれど、冬を楽しめない人にとっては多すぎる。大方、そんなところだろう。
私は十八年間を生きてきた。言い換えるのならば十八回の冬を経て、今の時間を生きていることになる。
これは私のそんな十八回の冬の中で、最も寒かった冬の話だ。
☆☆☆
音が澄んでいる。
Aはライブハウスの壁に背中を預けて座り込み、くぐもった音色に耳を澄ませた。
夜の7時。普通の小学生なら習い事でもない限り家に帰っている時間だが、Aは家に帰りたくない時、こうしてどこかで時間をつぶしてから帰ることが度々あった。
叔母家族には友達といると伝えてあるのでこうしていても怒られることは決してない。叔母は聞き分けのよく聡明なAに盲目的な信頼を寄せているし、仮に嘘がばれてもAに対してガラス細工のように、壊れ物のように接する彼女は厳しく怒ることはないといえる。
Aにとって、それは心配されていないのだと、愛されていないのだと裏付ける根拠にしかならなかったのだが、口うるさく干渉されるよりは何倍もマシだった。
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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» ありがとうございます〜！こちらはかなり不定期更新となってしまうと思いますが、本編共々よろしくお願い致します！ (2020年5月30日 6時) (
レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - 番外編…！ありがとうございます！！楽しみにしています！！ (2020年5月29日 23時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年5月28日 21時
