33*-3 ページ4
「はい。完成」
さほど時間はかからずに仕上がったメイクに鏡を見てAは目を見開いた。
「…これ、本当に私？」
頬は薄く薔薇色に染まっており、目元はラベンダーと表現するのが正しいのだろうか、淡い紫とブラウンを基調に色づいている。
「元がいいからメイクするのが楽しいわね」
腕が鳴るわ、と心底楽しそうに美咲は笑った。
「美咲さん生き生きしてるね」
「あはは、スタイリストにも憧れてたからね」
初めて知る美咲の情報にAはへえ、と声を漏らした。
「なれそうなのに」
「そんなに甘い世界じゃないのよ」
美咲の言葉にそれもそうか、とAは納得する。
「ああ！もうこんな時間…！急ぐわよ！」
慌てて道具を片付ける美咲。Aはぱっと時計を見るが、最初に集まった時間から1時間は経っている。
Aと美咲は急いで準備し、事務所を後にした。
☆☆☆
いつもより早く家に着いた天。
食事当番だったので夕飯の準備を進めている時にリビングのドアが開いた。
「ただいま」
「おかえり」
いつものように、1度手元を止めてAを見るとその姿がいつもと違うことに気づいた。
「…それ、どうしたの？」
滅多に髪型を変えたり、しっかりとしたメイクをすることがないA。
仕事でそういうことがあっても、大抵はその場でメイクを落とし、髪を下ろして帰ってくるため、天は仕事時以外のAのそういった姿を見たことがなかった。
「美咲さんがやってくれたんだ。器用だよね」
へえ。
天はそう言ってAに近づく。
料理中故に、手を一度洗ったのだろう。少し濡れた天の手がAの髪に触れた。
「可愛い。似合ってるんじゃない」
これ、どうなってるの？と編み込みをじっと見つめる天。
「っ、…荷物、置いてくる」
Aは逃げるように天に背を向けた。
顔に集まった熱を悟られたくないと思ったからだった。
家族として、ライバルとして好きだと言って、距離を取ったはずなのに、彼の一言で簡単にその考えが覆りそうになった事実に苦笑した。
ダメなんだ。
知ってる。知ってるのに。
どうしようもなく、君に焦がれてる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なのは(プロフ) - 更新しないですか？楽しみです！(>_<) (2022年7月22日 16時) (
レス) id: bac325c829 (このIDを非表示/違反報告)
さけとば(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました！天と夢主ちゃんがどう変化していくのか楽しみです(*´ω｀*)更新頑張ってください！ (2021年10月9日 15時) (レス) @page22 id: 9eb36d9080 (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - 更新楽しいです！ (2021年9月23日 1時) (レス) id: 60efdb9fc8 (このIDを非表示/違反報告)
ドーナツ(プロフ) - moekaさん» 更新が遅れてしまい申し訳ないです…！ちまちまとですが書き進めていきたいと思っているので、これからも宜しくお願い致します！ (2021年8月16日 21時) (レス) id: e3d0035b98 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しいです。待ってます。 (2021年4月10日 17時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ドーナツ | 作成日時：2020年6月18日 18時
