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「"ねえ、こっち向いてよ"」

「"………嫌"」

目線を合わせようとしてくる天から顔を逸らす。そういう演技なのだけれど、実際に今は天と顔を合わせたくないなと思った。

そんな私の気持ちに気づいているのか否か。


(ちゃんと集中して)

多分、私以外の誰にも届いていない声。
昔から比較的耳が良かった私が、天の近くにいてギリギリ聞き取れる大きさの声だった。

集中しろ、彼が言いたいことはよくわかる。
天と実緒のことばかり気にして集中できていないのは事実だ。だけど、監督も周りのスタッフさんも気づかないくらいには上手くできていると思う。

そんな私の心に気づいたのかは定かではないが、天が再び小声で囁いた。


(…ボクだけ見てて)


その言葉の意味を理解するよりも先に、天に強引に顔を上に向けられ、彼と目が合う。

「"好きだよ"」

「"…っ、私は嫌い"」

彼の瞳に私が映る。
アンバーの瞳に反射する私の姿は、なんだか私じゃないように見えた。

「"…嫌いだよ。私以外の女の子に優しくするところも、私にばっかり意地悪するところも、私の気持ちを知っててそんな態度を取るところも"」


一旦目を伏せる。そして、もう一度天を見上げた。

「"…全部、嫌い"」

天は私を抱きしめた。

「"…じゃあ、それを治したら好きになってくれるの?"」

私は首を横に振った。

「"…だって、もう好きだから"」

その言葉を言い終わるのと、この状況になるの、どちらが早いか。

天の顔が近づいて、影が重なる。

目は閉じなかった。なんとなく、彼の顔を見ていたかった。
天も目を閉じていなかったので、視線がぶつかる。不思議と嫌な感じはしなかった。


カットがかかって天の顔が遠ざかる。なんだか名残惜しい気持ちになったが特にそれを言葉にすることはしなかった。

監督から、本当に恋をしているようだと絶賛され微妙な気持ちになる。

だって、そういう風に見えるなんて、完全に無意識だったから。

お礼を伝えると天も続けて同じ言葉を発する。

その横顔を見ても、彼がどんな表情をしているかはわからなかった。

27*君が大好きなボクへ。→←26*-4



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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» わー!!!ありがとうございます…!本当に悩んでいたのでありがたいです…!いつでもいくらでもリクエストお待ちしています〜!!本当にありがとうございます!! (2020年6月11日 1時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - またリクエスト失礼してもよろしいでしょうか...? 赤面 と いつもと違う髪型 をお願いしたいです、、ふたつも無理言ってすみません(汗) (2020年6月11日 1時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
ドーナツ(プロフ) - 夢巫女さん» わー!いつもありがとうございます!!迷走中ですが、これからも読んで下さると嬉しいです!!更新頑張ります! (2020年6月4日 10時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - こういう作品を待っていたっ!!最初の方から読んでいましたが、感謝を伝えたくて我慢できませんでした!これからも更新楽しみに待ってます! (2020年6月3日 22時) (レス) id: a86d07998f (このIDを非表示/違反報告)
ドーナツ(プロフ) - ぽんさん» わあ…!ありがとうございます!!凄く嬉しいです!更新マイペースですがこれからもよろしくお願いします〜!! (2020年5月26日 18時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ドーナツ | 作成日時:2020年5月5日 23時

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