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それは偶然だったかも知れないし、必然だったかも知れない。
それは誰にも不確かな事だったが天もAも必然だった事を望んでいた。
もっとも、それを望んだところでどうもならないのだが。
Aと天は数秒間見つめ合った。
2人ともレッスンが終わって同時に部屋を出た。2人のレッスンをしている部屋は隣なのだからそれで会うのは当然だろう。
あの日、早朝にAは天の部屋から出て行った。ぐっすり眠っている天には何も言わずに、“部屋に帰ってるね。昨日はありがとう。”と丁寧な字のメモを残して。
数秒間沈黙が続いた後、先に口を開いたのは天だった。
「また会ったね。あの時、何か一言言ってくれれば良かったのに。」
「天が気持ちよさそうに寝てるから。どう?レッスンは。」
「まだまだだよ。ボクの求める所には全然達してない。」
「そう。」
再び沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはAでも天でもなかった。
「おやA、天。こんな所に居たのかい。」
「……九条さん…」
そう。その声の正体はふたりを引き取った九条鷹匡だった。
「丁度2人を探して居たんだ。紹介しようと思っていたんだけれど、その必要はないようだね。もう仲良くなったのかい?」
なんとなく、本当に何となく、この前のことは知られてたくないな、とAは思った。
「ちょっと、助けてもらって」
その言葉を発したのは天だった。彼も、同じ気持ちだったのかとAは笑みを零した。
あながち間違ってはいない。
天もAも眠れなかった。
そこで丁度2人が出会い、一緒に寝た。
それだけのことが、2人だけの秘密になることが、天は少し嬉しかった。
☆☆☆
ほんの十分前までレッスン室前の廊下で話していた天たちだが、鷹匡の一緒に食事を取ろうという一言によって、テーブルを三人で囲んでいた。
鷹匡の話によると、この無駄に広い家に住んでいるのは鷹匡と天とA、それにダンス、歌、パフォーマンスの先生に掃除や洗濯などをしてくれている人達だけらしい。
そんな話を聞きながら天はオムライスを口に運ぶ。彼女が作ったオムライスは予想以上に美味しくて、天は目を輝かせた。
Aはそんな天の様子を見て少し心が温かくなった気がした。
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ドーナツ(プロフ) - わあ…!ありがとうございます〜!!お友達さんとは仲良くなれそうです…!笑 嬉しいお言葉ばかり、本当にありがとうございます…!こちらこそありがとうございました! (2020年6月7日 12時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
via - 私の友達がアイナナ大好きなんですよ!しかも、推しが同じだったはず…言葉での表現の仕方が凄く上手くて、簡単に小説の光景が思い浮かびました。凄く面白かったので友達にもオススメしてみようと思います!イベントに参加して頂きありがとうございました! (2020年6月7日 9時) (レス) id: 124b642d9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドーナツ | 作成日時:2020年4月1日 0時