世界一愛する君の側へ

手紙 [坂田] ページ29

拝啓



そろそろ桜が散り始めて、お前が高校を卒業してから8年になるな。



元気か?


まぁ俺も、お前の結婚式に呼ばれているからわざわざ手紙に言葉を託すのも可笑しいかもしれないが…。




恥ずかしいからな。

手紙を書くことにした。




高杉。



お前はほとんど授業サボってたよな。

だけどAが来た途端に授業に出るようになった。



最初は記憶が戻っていて、Aに抱き付くかと思った。


だが違って、Aを見た瞬間椅子を蹴って、




「お前……俺に会ったことあるか」


だと。



その瞬間、Aの顔が歪んだのをお前以外のクラスの奴ら全員分かったと思うぜ?




「………無いね

私も会ったことあるように感じるんだけどね」




精一杯のAの演技に気に留めずにお前はAに引っ付いて歩くようになったな。




俺がお前をひっぱたいて記憶を取り戻させたかったよ。




俺が用事で国語準備室でAと話していた時、言った言葉だ。


Aはあの時こう言ったんだ。




『記憶は戻らなくても良いんだよ』


半分泣きそうになりながら。




松陽が死んだ時からAは泣けなくなって。

時影が死んじまった時も泣けなかった。



でも、お前の前なら、アイツは泣けるんだ。




覚えてるか?


まだ子供の頃、松陽が生きていた頃、

俺とお前でAを取り合って喧嘩してたな。




でも喧嘩は半年でなくなった。



あの時から、Aはお前を見ていた。

俺なんか見てもいなかった。







なぁ高杉。


絶対にAを幸せにしろよ。



俺の分まで。




良いな?



どう終わればいいか分かんねぇから、これで終わりにする。




じゃあな。







敬具

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