9つのくちづけ【短編】 (ページ11)

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おそろいがいい - 黒ページ11

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深夜2時。浅い眠りから目が覚めてしまって、そのまま目を閉じる気にもなれず体を起こした。いつもよりひとり分広いベッドを降りて、渇いた喉を潤そうと冷蔵庫の水を取り出すと、ちょうど玄関から鍵の開く音がした。

Aさんが、帰ってきた。

リビングの扉が開いたのと同時に声をかければ、Aさんの肩が少し震えたのが目についた。

「おかえり」

「.....っびっくりした、起きてたんだ」

「うん。寝れなくて」

「そっか」

腕時計を外して、蛇口から流れる水で手を濡らす。

たったそれだけの仕草なのに、目を奪われてしまうくらいには彼女は美しくて、それが少し不安だったりもする。

そんな俺の気持ちをよそに、それちょうだい、とシンクに手をついたAさんに飲みかけのペットボトルを手渡す。水を流し込むたびに上下する細い喉元をぼんやりと眺めていた。

そのときにふと視界に入った、赤いあと。

Aさんのでも、俺のでもない香水の匂い。

「Aさんここ赤くなってる」

「え？.....ああ、ヘアアイロン当てちゃって」

「.....すぐ冷やしなよ。綺麗な肌なのに」

「うん、気をつける」

Aさんは器用じゃん。今まで一度もそれで火傷したことなんて無かったでしょ？

いつからそんなに嘘が下手になったの。

彼女の首筋へ触れた指先を離さずに、そのままその赤いあとをゆっくりと撫でる。

そうすると、Aさんは瞳を揺らして、軽く俺を手をはらった。

「ごめん、痛かった？」

「...ううん、平気」

「Aさん、」

「シャワー浴びてくる。寝てていいから」

「.....うん。わかった」

彼女はそのままリビングを出ていった。

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