全然見えませんでしたよ ページ44
ピーンッ
コインが綺麗に弾き飛び、ゴトーさんの手に収まる。
「コインはどちらの手に？」
私たちは揃って左を指差す。
「御名答。では、もっと早く行きますよ。」
貼り付けた笑顔でゴトーさんはニコーと笑う。
ピーーンッ
さっきよりも勢いよくコインが飛ぶ。
まだ目で追える速さだ。
「さあ、どちら？」
「また左手」
周りの執事たちがパチパチと拍手をしだす。
「すばらしい。じゃ、次は少し本気を出します。」
コインの弾く音は小さいのに高く飛んだコインに、恐ろしく速い手捌き。
「さあどっち？」
「ん〜自信薄だが……多分右……｡」
「私はキルア様を生まれた時から知っている。僭越ながら親にも似た感情を抱いている……｡正直なところ……」
ゴトーさんの纏う空気がぐぐっと重くなる。
「キルア様を奪おうとしている、お前らが憎い。」
さっきまでの笑顔とは打って変わって額にシワを寄せ、敵対心丸出しだ。
「さあ……どっちだ？答えろ。」
「左手だ。」
クラピカが冷静に答える。
ゴトーさんが左手を開くと、ぐしゃりと曲げられたコインが乗っていた。
「奥様は消え入りそうな声だった。断腸の思いで送り出すのだろう。許せねェ。」
コインをそっと目の前に出す。
「キルア様が来るまでに結論を出す。オレがオレのやり方でお前らを判断する。文句は言わせねェ。」
ゴトーさんの言葉を合図に周りの執事たちが刀を持ち、カナリアを人質に取られてしまう。
止めたかったけど、そろそろキルアが来るだろうし、ゴトーさんとやりあうのは分が悪い。
コインはどんどん投げられて、残るは私とゴンだ。
「どんと来い！」
「ふん！」
もうコインが投げられた音もしない。
「どっちだ？」
「『左手！』」
「……やるな」
ゴトーさんはニヤリと笑う。
「じゃ、こいつはどうだ？」
ゴトーさんは立ち上がり、執事さんと3人でコインを投げ合う。
ビュオッという風を切る音が聞こえる。
「さあ、誰が持ってる？」
いやあ、私目だけは良いんだよね。
でもここはゴンくんを立てようかな。
「後ろのこっちの人でしょ？」
ゴンは後ろを指差す。
「フ……すばらしい！！」
あたりから拍手が起こる。
『ゴン、すごい！！私、全然わからなかった。』
「……あなたも良い目をお持ちで。」
ゴトーさんは私を見てニヤッと笑う。
『……そうですか？全然見えませんでしたよ。』
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作者名：さっかーろ | 作成日時：2023年5月3日 17時
