■5. ページ6
────……
ぽつり、ぽつりと降り出す雨。
僕はフードを外しながら、彼女らが消えていった暗い路地裏の奥を呆然と見つめていた。
インターンが始まり、ヒーローとしてのパトロール1日目のことだった。
「───いかな…いで、」
ある女の子に遭遇したのは。
手足に包帯が巻かれているその小さな女の子は、怯えたような表情で助けを求めるように僕の胸元を掴んでいた。
その女の子を追うようにして路地裏の奥から姿を現したのは、ちょうど観察対象としていた“死穢八斎會”の若頭である治崎廻だった。
見逃すわけにも行かず問い詰めれば、彼は人目のつかない方へと誘導する。
僕らがそれを追って路地裏へと入ろうとした時だった。
『壊理、』
セーラー服に身を包んだ少女がふらりと顔を出したのは。
彼女は優しい口調で小さな女の子を───壊理ちゃんを連れ戻そうと伸ばした手を止めて、
…ぎゅっと口を噤むと下を向いた。
少しして顔を上げた彼女は壊理ちゃんに、僕らに、ニコリと笑いかける。
パチリと絡み合った目線。
思わず目を見開いた僕に、彼女は“助けてあげて”とでも言いたげな視線を向けていた。
柔らかくて、でもどこか寂しげな表情。
壊理ちゃんはそんな彼女も一緒に行こうと手を伸ばした。
───のに、次の瞬間目の前の2人の表情が微かに強ばった。
気がつけば僕の腕の中にいた壊理ちゃんは“A”と呼ばれた彼女の元に居た。
「なんだ、もう駄々は済んだのか？」
背を向けた治崎に、コクリと頷く壊理ちゃん。
「え、あの…」
何が起こったのか分からずに手を伸ばしかける僕に治崎は「ご迷惑お掛けしました」なんて。
Aさんは壊理ちゃんを抱いて僕らを見つめる。
「A、行くぞ」
治崎の言葉に目を伏せて、振り返り際こちらを流し見たAさんは、
『…お仕事、頑張ってください』
…悲しげにそう残して去っていった。
はっきりと聞こえるはずなのに弱々しい声。
笑っているのに寂しげな表情。
「待って…！なんで…、」
「追わないよ」
ゆらりと立ち上がった僕は、ミリオ先輩に止められる。
「気づかなかったかい。殺意を見せつけて、あの子を…あの子らを釣り寄せた」
僕はただ呆然と路地裏の奥を見つめることしか出来なかった。
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ゆきんこ - 治崎廻さんが私の一番好きなキャラクターなのですが、夢小説がなかなか無くて自給自足しなきゃなぁ、と思っていたところ、この作品に出会いました。この作品が大好きです！続きもすごく気になります。更新頑張ってください。応援しています！ (2020年9月22日 14時) (
レス) id: 622aa4e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
碧佳 - え、めっっっっっっっちゃ好きです!!!すんごい続き気になる〜！更新頑張ってください！ (2020年3月3日 12時) (レス) id: f33055e332 (このIDを非表示/違反報告)
pico(プロフ) - ありささん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです！ (2020年2月17日 0時) (レス) id: 9e63868de4 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですこの作品！めっちゃうちの読みたかったドストライクです！更新ファイトです！ (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
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