□36. ページ37
·
「それでねっ、りんごあめ食べれるって…」
『へぇ…』
「Aも食べたことあるの…？」
『食べたことは無い…かな』
落ち着いたところで、一生懸命今日あったことを話す壊理になんだか和む。
私は…デクさんに迷惑かけちゃったけれど。
…今思うと心配して慰めてくれてたのに対してあれはないよなぁ。なんであんな態度とっちゃったんだろう。
次会った時にまた謝らなくちゃ。
…我ながら謝ってばっかだなぁ。
『楽しみだね、壊理』
「うん…」
いつもよりイキイキとして話すから、楽しみなんだろうなと思っていたのに…壊理はしゅんとする。
『…どうしたの？』
「ルミリオンさんが…みんな私の笑顔が見たくて戦ったって…」
俯きがちで話す壊理の小さな手が、膝の上でぎゅっと強く握られている。
「でも、わたし、どうやって笑えばいいのか、分からなくて…」
『……っ』
───どうしたって泣けない私と、逆だ。
まだ壊理は救われてない。
こんなにも幼くて心優しい女の子が笑えないなんて、そんなの…、
『…大丈夫だよ、壊理』
ごくりと色々な気持ちを呑み込んだ私は、やんわりと彼女を抱き寄せて肩をさすってあげる。
…八斎戒に居た頃も、よくやってあげていたから。
根拠の無い、無責任な“大丈夫”の言葉。
でも私ができることって、言えることって、…それくらいしかなくて。
『私のせいで、ごめんね』
いつしか口癖になってしまった“ごめんね”を繰り返す私に、壊理は謝らないでと言わんばかりに私のことを見上げた。
…もう、ほんとに癖になっちゃってる。
しばらく壊理を抱きしめたままトントンしていると、彼女は眠そうにウトウトし始める。
そんなところで、ノックの音が響いた。
『はい…？』
「もう就寝時間ですよ〜」
『あ、そうですよねすみません…！』
眠そうに目を擦る壊理と、慌てて立ち上がる私に看護師さんは優しく笑うと「いっぱい話せたかな？」と壊理に問いかける。
壊理が頷いたのを見て、看護師さんは「よかったね」なんて。
「A…行っちゃうの…？」
『…自分の部屋に戻って寝るだけだよ。また明日も来るからね』
不安げな壊理にそう返した私は、ぐっと唇を噛み締めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ - 治崎廻さんが私の一番好きなキャラクターなのですが、夢小説がなかなか無くて自給自足しなきゃなぁ、と思っていたところ、この作品に出会いました。この作品が大好きです！続きもすごく気になります。更新頑張ってください。応援しています！ (2020年9月22日 14時) (
レス) id: 622aa4e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
碧佳 - え、めっっっっっっっちゃ好きです!!!すんごい続き気になる〜！更新頑張ってください！ (2020年3月3日 12時) (レス) id: f33055e332 (このIDを非表示/違反報告)
pico(プロフ) - ありささん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです！ (2020年2月17日 0時) (レス) id: 9e63868de4 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですこの作品！めっちゃうちの読みたかったドストライクです！更新ファイトです！ (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
