□16.アメジスト ページ17
────……
もう日が暮れ始める頃。
壊理を救った張本人であるデクさんがやってきた。
雄英高校の制服を纏った彼は私を見るなり安心したように、嬉しそうに表情を輝かせる。
私が無事で良かった、と。
『デクさん、ありがとうございます』
私の言葉に不思議そうにパチリと瞬きをひとつした彼は「あ、敬語じゃなくてもいいよ」と付け足す。
『…壊理のこと、救ってくれてありがとう』
ドアのところにいるであろう相澤さんの方を見れば、無心でどこかを見つめている様子だった。
…気を使うなってことかな。
「あ、僕は当たり前のことをしただけで…、むしろ最初に会った時にすぐ保護できなくて…」
『デクさんはすごいよ』
「へ？」
私にできなかったことをやりのけてしまった。
壊理のことを救うことができなかった私は、
私は…、
『私は、壊理に何もしてあげられなかった』
無個性なことは言えない。
言ったらどんな顔をされるか。
…失望されちゃったりするのかな。ありえないものを見るような目で見られちゃうかもしれない。
「そんなことないよ、壊理ちゃんは確かに君のことを信頼してた」
『ううん、それは私が唯一の心の拠り所だったから』
「それは違うよ…！」
違くないよ。
私がそう返すよりも先に、デクさんが「僕が救けた時、壊理ちゃんは君の名を呼んでたよ、…何度も」と私の目を見る。
…でも、結果救けたのはデクさんでしょ。
私はいつだって治崎さんを優先してきた。
壊理が泣いていても、苦しんでいても、治崎さんを止めようともしなかった。
それを今ここで言ったら、それこそ彼は失望してしまう。
きっと、そんな最低な人間の私を軽蔑する。
…やっぱり此処に私の居場所は無い。
『治崎さんが言ってた。私は偽善者だって』
「そんな、」
『壊理が可哀想だって言いながら私は壊理を救けなかった。ただありきたりな言葉をかけるだけ』
ダメだ。
さっきから卑屈な言葉ばかりが浮かんでしまう。
困ったような表情の彼に、私は軽く笑って「私と違ってデクさん、強いんだね」と話を変えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 821人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ - 治崎廻さんが私の一番好きなキャラクターなのですが、夢小説がなかなか無くて自給自足しなきゃなぁ、と思っていたところ、この作品に出会いました。この作品が大好きです！続きもすごく気になります。更新頑張ってください。応援しています！ (2020年9月22日 14時) (
レス) id: 622aa4e7f6 (このIDを非表示/違反報告)
碧佳 - え、めっっっっっっっちゃ好きです!!!すんごい続き気になる〜！更新頑張ってください！ (2020年3月3日 12時) (レス) id: f33055e332 (このIDを非表示/違反報告)
pico(プロフ) - ありささん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しい限りです！ (2020年2月17日 0時) (レス) id: 9e63868de4 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですこの作品！めっちゃうちの読みたかったドストライクです！更新ファイトです！ (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2c7a607a36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
