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晩冬の夜に2 ページ9

成行きで家出をした、あの日から早六年。

 ダリアはイーストシティ都心部で職を転々としながら細々と生活をしていた。慣れない仕事は大変だったが、何とか食い繋いはでこれた。
 今は酒場で給仕の仕事をさせて貰っている。

 今日はお客の入りが多く、ダリアも酒場の女将さんも忙しく働き回っていた。
 ダリアは空のグラスを片手に、独りでカウンター席に座っている男性客を見つける。

「お客様、おかわりは如何ですか?」

 ダリアが声を掛けると、男性客はこちらに顔を向ける。彼の黒曜の瞳と目が合った。この人を、知っている。ずっと会いたいと思っていた。六年も心のどこかで探し続けていた人。

「マスタングさん……」

「……頂こう」

 マスタングは空のグラスをダリアに差し出す。

「あ、はい」

 ダリアは持っていた酒瓶を傾けてそのグラスに注ぐ。

「……ずっとこの店で働いていたのか?」

 マスタングが口を開く。あの頃と変わらない心地よい声が、これは現実なのだとダリアに教えてくれる。

「いえ、先月入ったばかりです。なかなか安定した仕事には就けなくて」

「大変なんだな」

 そう言ってマスタングはダリアの髪を優しく撫でた。いつかしてもらったことのある懐かしい感覚にダリアは目を細める。二人の距離が縮まってマスタングのお酒の匂いと高まった体温が感じられた。
 最後にこうして撫でて貰ったのはダリアが九歳くらいの時だっただろうか。なんだか照れくさくなってくるのに、マスタングの手は一向にダリアの頭から離れない。

「子供扱いしないで下さい」

 恥ずかしくてちょっと突き放すような言葉が出る。

「おや、それはすまない」

 マスタングはそう言うとダリアから手を離した。それでも何だかご機嫌な様子に見える。

「私よりもマスタングさんの方が軍のお勤め、大変でしょう?今は何をされておいでなんですか?」

「まあ、色々やってるよ。最近は特に忙しかった」

「この頃は立て続けに仕事が舞い込んできて、自由な時間もなかったな」

 マスタングはいつもの女性を相手取るときよりも自然体で、最近あったことをダリアに話す。

「ユースウェルの汚職事件とか、リオールのレト教騒動とか。このあいだまで家にも帰れなかったし
こんな風にゆっくり酒を愉しむのは久しぶりだ」

 そう言ってマスタングはグラスに口をつける。

「すまない、もう一杯貰えるかな」

 さっきから結構飲んでいるマスタング。大丈夫だろうか。

「かしこまりました。それと、お水もお持ちしますね」

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設定タグ:鋼の錬金術師 , ロイ・マスタング , 市販書き(二次創作)   
作品ジャンル:恋愛
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とむら(プロフ) - すごく面白いです!あの、設定でのイメ画ってウィワクシアさんが描いた絵ですか?なにかのアプリで描いた?ものならそのアプリって教えていただけないでしょうか? (2017年12月31日 22時) (レス) id: fe1253ce58 (このIDを非表示/違反報告)
ウィワクシア(プロフ) - 松本鈴香さん» ご感想ありがとうございます。初めてコメントを付けて頂けてとても嬉しいです。今後の励みとさせて頂きます。 (2017年6月11日 8時) (レス) id: 953d5472a5 (このIDを非表示/違反報告)
松本鈴香(プロフ) - ロイさん好きなので良かったです(*>ω<*) (2017年6月1日 0時) (レス) id: 2ed850d9b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ウィワクシア・D | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/793fed8a0b1/  
作成日時:2017年3月6日 22時

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