東方司令部2 ページ30
ダリアは全力で突っ込んだ。電話の向こう側のざわめきが静まり返る。しまった、向こうは執務室だったと、ドキドキするダリア。一番黙ってほしい筈のマスタングは依然として楽しそうに呵呵と笑っていた。
「それで、こんな事を言う為だけに電話を?」
呆れた声でダリアが言うと、マスタングは嗜めるように返す。
「まぁ、そう怒るな。本気だが」
「切りますね」
「おい待て! 悪かったから」
慌てて取り繕うマスタング。初めから本題を出してくれればいいのにとダリアは思う。
「実は急ぎの用があって早急に壊れた無線通信機を直したいのだが、部品が足りなくてね。君なら電子機械の分野にも明るいだろう?」
マスタングはダリアの返事を待たず部品の種類と規格を唱え始める。ちょっと待ってとダリアは話を止めた。
「買って来いと? 私は軍部にとって部外者だと思うんですけど」
「構わん構わん。話は通してあるから、よろしく頼む」
一方的に話を切り上げて電話も切られた。あんまりではないか。自分の雇い主のなんと勝手な事か。ダリアは大きくため息をついて外出の用意を始めた。
…☆…
なんとか買い物を終えて東方司令部に辿り着く。ここへは十数年振りに訪れたが、懐かしさは感じない。
軍部と縁の深いグランディウス家はかつて東方軍と共同して錬金術の技術開発を行っていた。ところが、いつからかグランディウス家は東方軍と手を切り、中央軍と直接関わる様になったらしい。まあ、もうダリアには関係の無い話かもしれないが。
ダリアは入口に立っていた軍人に話しかけてみることにした。
「すみません、使いを頼まれたダリアと申す者なのですが」
「ああ、お待ちしていました」
軍人は愛想よく対応してくれて、本館の前に立つ金髪の軍人に手を振る。手を振られた軍人はくわえ煙草を靴の踵で揉み消してこちらに走ってくる。
「彼が案内してくれます」
ダリアは「ありがとうございます」とお辞儀をして金髪の軍人の元へ歩いていく。
「アンタがダリアだな? 俺はハボックってんだ。大佐に案内を任されてる。行こうか」
ハボックと名乗った彼はにこやかに挨拶をする。ダリアは緊張してはにかんだ。
大佐のいる執務室は二階にあるらしい。ダリアは歩き始めたハボックの後ろに付いて行った。
「そんなにカタくなる必要ないと思うぞ? 俺達お前が大佐に怒鳴ってるの聞いてたし」
「え?!」
ダリアは驚いてハボックの方を見る。多分今日の電話の事だ。どうやらあの場に彼もいたらしい。
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とむら(プロフ) - すごく面白いです!あの、設定でのイメ画ってウィワクシアさんが描いた絵ですか?なにかのアプリで描いた?ものならそのアプリって教えていただけないでしょうか? (2017年12月31日 22時) (レス) id: fe1253ce58 (このIDを非表示/違反報告)
ウィワクシア(プロフ) - 松本鈴香さん» ご感想ありがとうございます。初めてコメントを付けて頂けてとても嬉しいです。今後の励みとさせて頂きます。 (2017年6月11日 8時) (レス) id: 953d5472a5 (このIDを非表示/違反報告)
松本鈴香(プロフ) - ロイさん好きなので良かったです(*>ω<*) (2017年6月1日 0時) (レス) id: 2ed850d9b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ウィワクシア・D | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/793fed8a0b1/
作成日時:2017年3月6日 22時