錬金術の咎4 ページ24
マスタングは暫く硬直した後、破顔大笑した。あまりに可笑しそうに笑うのでダリアは顔を赤くする。
｢わ、笑うような所ありました?!｣
満面の笑みを湛えながらマスタングはダリアの提案に答えた。
｢良いだろう! ……最初に力になると言ったのは私だからな。しかしそう来るとは、破壊力抜群だ｣
言いながらまだくすくすと笑い声を上げるマスタング。｢そんなに笑う事ないのに｣とダリアは膨れっ面になる。
｢ほら、席について食べよう｣
二人が向かい合って座ると、ダリアは匙をとってポタージュを口に運んだ。
口に入れた途端、戻しそうになった。
味が悪い訳では決してない。寧ろ美味しい。それなのに反射的に体が食事を拒んでいる。
思い当たる節は、無いでもない。
様子のおかしいダリアをマスタングが心配そうに窺う。
｢ダリア、顔色が悪いぞ? まだ具合が悪いんじゃないのか?｣
ダリアは勢い良く首を横に振って否定する。口の中の物を無理矢理飲み込んだ。冷汗が流れる。
｢ダリア。まだ私に話していない事があるんじゃないか?｣
｢何故そう思われるのですか？｣
真剣な面持ちでダリアを見つめるマスタング。ダリアはまだ食事の苦しさの後を引きながらも余裕がある振りをして微笑する。
｢君が着ていた衣服に銃痕があった。しかも左胸の所だ。そしてあの血痕と焼け焦げた生地。あまりこんな事は言いたくないが、今ダリアが無事である事の方が不思議なんだ。
そして君を背負って帰る時、異常なまでに軽かった。君は何かしらの錬金術で、代価を支払って生き延びたのではないか?｣
実に見事な推察だった。流石は若くして大佐の地位まで上り詰めた軍人というだけある。こうなってはダリアとしても白状せざるをえない。
出来ればこれは、これだけは隠しておきたかったのだが。
｢聞きたいですか?｣
ダリアは一応確認してみる。マスタングに睨まれてしまった。気になるに決まっているか。はぐらかしても仕方ないので、ダリアは意を決して静かに頷いた。
｢仰る通りです。私は錬金術を使って辛うじて生き延びた｣
｢まさか、人体錬成なのか……!?｣
深刻な様子で狼狽えるマスタング。ダリアはすぐさま首を横に振る。
｢違いますよ。私にそんな高度な事は出来ないってマスタングさんならよくご存知でしょう?
私は、死にゆく体に合成獣の体を上書きして作り換えたんですよ｣
部屋の中が妙に静まり返る。ダリアは敢然と宣言した。
｢つまり、私は既に人間ではないんです｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とむら(プロフ) - すごく面白いです！あの、設定でのイメ画ってウィワクシアさんが描いた絵ですか？なにかのアプリで描いた？ものならそのアプリって教えていただけないでしょうか？ (2017年12月31日 22時) (
レス) id: fe1253ce58 (このIDを非表示/違反報告)
ウィワクシア(プロフ) - 松本鈴香さん» ご感想ありがとうございます。初めてコメントを付けて頂けてとても嬉しいです。今後の励みとさせて頂きます。 (2017年6月11日 8時) (レス) id: 953d5472a5 (このIDを非表示/違反報告)
松本鈴香(プロフ) - ロイさん好きなので良かったです(*>ω<*) (2017年6月1日 0時) (レス) id: 2ed850d9b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ウィワクシア･D | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/793fed8a0b1/
作成日時：2017年3月6日 22時
