沢と水の関係性１ (ページ35)

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温かい手ページ35

今まで考えていたことがスーッと無くなっていく。翼が無事だっただけで私は満足だから……。

その時ものすごい勢いで廊下を走る音が聞こえてくる。この音、絶対に拓司さんだ。

案の定その音は私の病室の前で止まった。

伊「颯！！！」

廊下を走らないでください。そんな看護師さんの声が聞こえてくる。多分後ろからついてきたのか、鶴崎の「すみません」っていう声が聞こえてくる。

伊「そう……」

水「……た、く」

声を出したいのに……声が出ない……。理由が分かっていてももどかしい。

そう思っていたら拓司さん、私の傍まで来てくれてそっと頬を撫でてくれた。

伊「颯……翼を産んでくれてありがとう、それとごめんな。こんな状態だなんて俺気が付かなくて……」

拓司さん、何言っているんですか？こんな状態なのに気が付けなかったのは私も同じですよ？自分の体の状態に気が付けなかった私が悪いのであって、拓司さんが悪いわけが……

伊「颯を大事にしなきゃいけなかったのに……俺、旦那失格だな……」

旦那失格なんかじゃない。私は、私は拓司さんじゃないとダメなんです。

そう言いたいのに力が出なくて……ただ撫でてくれる手が心地よくて、私はそのままもう一度夢の中の世界に旅立っていった。