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〆．
私に818億円の価値なんて、どう考えてもない。
実際に818億円が支払われることもないだろうし、だとしたら、
彼らは大きな爆弾を抱えて、いつもより一人分多く養わなくてはいけない。
私が、どうしてこの場で何も気にすることなく過ごせるだろうか。
ここに、私の居場所はない。
だから、目の前に用意された美味しそうなシチューにも、手をつけることができなかった。
目の奥がじんと熱くなって、零れてしまいそうなそれを必死にせき止めていた。
「………神ちゃん」
「え？流星、なに？」
「俺、旅行行きたい」
「旅行！？」
「や、別にええけど、なんでこのタイミング？」
流星さんの言葉に、他三人が動揺する。いや、私もだ。
「ええやんか、お金なんか有り余るほどあるんやし」
「そらそうやけど……」
「それに、ちょうど旅行の割引券あったやん、五人分」
「ああ、なんでか五枚、商店街のくじで引き当てたやつね」
「……五人で、旅行行こう」
流星さんの言葉の一つ一つが、私の心に染みた。
ストレートにではなく、遠回しに。
不器用で、とても優しい人だ。
「………………っ」
「えええ！？Aちゃん！？」
私の不安をかき消す流星さん。
お願いしたら、叶えてくれるんだよね？
スプーン片手に私に視線を注ぐ彼に、頭を下げた。
「流星さん、私、必要とされたい……。居場所が、欲しいです」
我ながら、なんて図々しい願いだろうかと呆れてしまう。
流星さんは何も言わずに、私の頭を撫でた。
「……当たり前やん！！」
「せやで！Aちゃんは俺らにとって必要な存在やで？」
「流星なんか、Aちゃんのこと誘拐するって決めてからずーっと"はよ誘拐しに行こ"ってうるさかってんし！」
「やから、そんなお願いせんだって、Aちゃんの居場所はここやねん。……みんな、そう思ってるからな？」
三人の優しい言葉と、流星さんの温かい手のひら。
私は小さく頷いた。
「ありがと、ございます……」
スプーンを取って、いただきますと手を合わせた。
まだ熱いシチュー。
すごく美味しかった。
みんなは、ポロポロと涙を零しながらシチューを口に運ぶ私を、優しく微笑んで見ていた。
「ごちそうさま〜」
「神ちゃんやっぱオカンやわ〜」
「流星、寝んといて」
賑やかな食卓。
この時間がずっと続けばいいのに。
叶わない願いを、胸にしまいこんだ。
〆．
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あお(プロフ) - うわぁぁぁぁもうズキュンこえてドキュンですわ (2020年5月20日 23時) (
レス) id: a4e0d9fce2 (このIDを非表示/違反報告)
#藤井あかね。 - 初見です!終わり方がすごくよかったです!りゅせくん×誘拐犯とか見たくて悶えてたんでほんまに嬉しいです~!笑なにしとんっていうレベルでキス魔でしたね…りゅせくんギャップですﾆﾔﾆﾔ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 51602379ec (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - はゆなさん！完結おめでとうございます♪そしてお疲れ様でした(＞＜) 時折泣いてしまう場面もあり、凄く感情移入しやすかったです^^* オマケも楽しみにしております！ほんとうにお疲れ様でした^^* (2017年4月9日 7時) (レス) id: 597aa18841 (このIDを非表示/違反報告)
mrn - はゆなさん» 完結おめでとうございます！めっちゃわかります！確かに叶えてくれそうですね(笑)藤井さんの声で言われたら絶対にキュン死ですよ(笑) (2017年4月8日 0時) (レス) id: ae9b8e761d (このIDを非表示/違反報告)
はゆな(プロフ) - 有菜さん» 感想と応援コメント、ありがとうございました！おかげさまで無事に完結しました(*´ω`*)最後まで胸きゅんしていただけたら嬉しいです。 (2017年4月7日 16時) (レス) id: 0cb07950a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はゆな
| 作成日時：2017年2月6日 0時
