06 私の存在価値 ページ6
〆．
「………、A……」
「んん………」
「しゃあないな、キスしたら起きるか」
「……え、えっ！？」
目がしっかりと開かないうちに、ガバッと起き上がる。
「あー、起きてもた…」
なぜか残念そうな顔をしているのは、例によって流星さん。
「私………寝ちゃってた……」
目を擦りつつ現状を把握しようと試みる。
暗い部屋。廊下から漏れてくる光。
すっかり日が暮れてしまっている。
もともとここに来た時点で薄暗かったから、寝過ぎたということはないだろう。
「晩ご飯、食べよ」
差し出された流星さんの手を掴み、起き上がった。
まだボーッとする。
机の上のデジタル時計は19時を少し過ぎた時間を表示していて、誘拐されてからまだ三時間ほどか、とぼんやり考えた。
「あ、Aちゃん！見て見て〜今日はクリームシチューやで！」
「ポテトサラダもあるからな、いっぱい食べてや〜」
一回へ降りると、にっこにこなしげと神ちゃんが、ダイニングテーブルから私達に話しかける。
……それから、もう一人、キラキラした瞳でこちらを見つめる男の人が…。
「ええええAちゃん！？めっちゃ可愛ええやん！なあなあ、彼氏おる？」
「こら、望！Aちゃん困っとるやろ」
望、と呼ばれたその人は、椅子から勢いよく立ち上がってずんずん近づいてくる。
「わ、わ、」
びっくりして流星さんの後ろに隠れると、流星さんは望さんをキッと睨んだ。
「望はそのままAに嫌われてまえ」
「ひど！！」
流星さんは基本、塩対応なんだろう。
「はいはい、はよ食べようや」
恐らく最初は四人掛けでちょうど良かったはずのテーブル。
私が来たせいか、いわゆる誕生日席というものがあった。
「Aちゃんは流星の隣な？」
「ええー！ずる！！じゃあ俺ここな！」
望さんがそこに座った。
………私なんかが、この四人の生活に加わってもいいのだろうか。
「ほんなら、手ぇ合わせて」
「「いただきます」」
左隣に座った流星さんはサラダをムシャムシャ頬張り、右隣に座った望さんはシチューを口の中へかきこんでいる。
正面のしげは猫舌らしく、コップに口をつけていた。斜め前の神ちゃんはみんなの様子を笑顔で見守っていた。
私は………。
「……Aちゃん？食べへんの？もしかして嫌いやった……？」
「違……くて……」
どうしても、この空間で自分だけが浮いている気がして、怖かった。
〆．
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あお(プロフ) - うわぁぁぁぁもうズキュンこえてドキュンですわ (2020年5月20日 23時) (
レス) id: a4e0d9fce2 (このIDを非表示/違反報告)
#藤井あかね。 - 初見です!終わり方がすごくよかったです!りゅせくん×誘拐犯とか見たくて悶えてたんでほんまに嬉しいです~!笑なにしとんっていうレベルでキス魔でしたね…りゅせくんギャップですﾆﾔﾆﾔ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 51602379ec (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - はゆなさん！完結おめでとうございます♪そしてお疲れ様でした(＞＜) 時折泣いてしまう場面もあり、凄く感情移入しやすかったです^^* オマケも楽しみにしております！ほんとうにお疲れ様でした^^* (2017年4月9日 7時) (レス) id: 597aa18841 (このIDを非表示/違反報告)
mrn - はゆなさん» 完結おめでとうございます！めっちゃわかります！確かに叶えてくれそうですね(笑)藤井さんの声で言われたら絶対にキュン死ですよ(笑) (2017年4月8日 0時) (レス) id: ae9b8e761d (このIDを非表示/違反報告)
はゆな(プロフ) - 有菜さん» 感想と応援コメント、ありがとうございました！おかげさまで無事に完結しました(*´ω`*)最後まで胸きゅんしていただけたら嬉しいです。 (2017年4月7日 16時) (レス) id: 0cb07950a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はゆな
| 作成日時：2017年2月6日 0時
