流れる星を見逃さないで

43 ページ43

〆．



「二人の誕生日で、しかも俺らが交換された日。これがなければ、きっと出逢えてなかった。……10万なんていう値段をつけられた屈辱の日やったけど、そう考えたら素敵や思わん？」


ガムテープを貼り終え、満足げな流星と目が合う。


「だね。私も、誕生日は学校を休んででも親と一日中一緒にいるっていうのがあったから、あまり好きな日じゃなかったんだ。でも、流星が生まれてきてくれた日だから、今は待ち遠しいよ」


身代金818億円に込められた意味を知って、心がじわじわ温かくなる。


「あと………これからも一緒に住むにあたって、しげのことも、少し話しとくわ」


「え？しげのこと？」


「ん。……あいつ、親おらんねん。数年前に、親が冤罪で裁判起こされて、無罪判決が出たけどマスコミが騒ぎ立てたせいでそういうレッテル貼られて」


「もしかして……じ、さつ…？」


「そう。やから、しげはマスコミが嫌いやねん。あんまり、しげの前ではニュース番組とか見ん方がええかもな」


だから、私が誘拐されたあの時も、あんなに冷たい顔をしたんだ……。


「わかった」


「詳しく聞きたいなら本人が話してくれるん待った方がええやろけど、もうええやろ？」


「うん。しげはしげだもん」


過去も、今の考え方も、全部ひっくるめてしげだ。


「………はあ、Aのそういうとこめっちゃ好き」


「えっ！？ちょ、流星離してって！荷造り終わってな……」


「もうええもん。……もう、可愛すぎてどうしよ、このままやりたい」


「それはだめです」


「えー…」


流星の駄々こねが始まったので、無視して作業続行。


荷物は少なめだけど、こんなにのんびりしてたら終わるものも終わらないよね。


「……なあ、A」


「え？なに？」


「俺、18年前に交換された相手が、Aで良かった。Aに、恋してよかった」


「………そういうの、恥ずかしいから言わなくていいよ」


「Aは？」


人の話を聞いてないのかな、この人は。


「………私も。私をさらってくれたのが流星で良かった。流星のこと、好きになってよかった」


何度も何度も思ったことだ。


私の言葉に嬉しそうに笑った流星は、私のことをぎゅうぎゅう抱き締める。


「そうだ、流星」


「んー？」


「私ね、まだ流星と出逢う前なんだけど、いつも同じ夢を見てたの」


「夢？」


「そう。……笑わないで、聞いてくれる？」



〆．

44 願い事→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す