25 本当の地獄 ページ25
〆．
「んん………」
物音で目が覚めた。
うっすらと目を開けると見えた天井。
見慣れた、私の部屋の天井。
ーカシャン…
「………………え？」
目を擦ろうとして腕を動かすと、金属が触れ合う音が聞こえた。
「………！？」
「ああ、A。目が覚めたかい？」
ベッドのすぐそこにいたのは、お父さん。
「Aを外にやったから、誘拐されたんだ。こうしておけば、問題は無いだろう？」
ようやく気付く。
腕には手錠、足首には足枷。
私は拘束されていた。
「お父さん……？やめてよ、なんの冗談？」
「冗談じゃないよ。これはAのためなんだ。さあ、お腹がすいただろ？朝ご飯を食べなさい」
狂ってる。
どうして……。
ベッドの脇に用意された朝ご飯は、いつもと変わらず美味しそうだ。
だけど、食欲なんてあるわけがない。
「見てると食べにくいかな？じゃあ、また後で食器取りに来るから」
理解が追いつかないまま、お父さんは部屋を出ていった。
もしかして、私は一生このまま……？
そんなの嫌だ。
なんとか外れないかと手錠を叩いてみたりしたけど、壊れない。
私の自由は、完全に奪われてしまった。
「…………流星さん、助けて……」
誰にも届かないその声は、虚しく空気に溶けていった。
流れる星にお願いしたら叶うんでしょ。言ってたじゃない。
「流星さん………流星さん…………」
涙は止まることを知らない。
泣いていたら、流星さんが励ましてくれるんじゃないかと思って。
ああそうだ。流星さん、まだ旅行行ってないよ、私たち。
商店街の福引で五人分当てたんでしょ？一緒に連れてってよ、ねぇ……。
どれくらいの時間が流れたのだろうか。
気がつけば外は暗くなっていて、自分が眠ってしまっていたことを知る。
少し動くだけで大げさにカシャンと音を立てる金属。
諦めともいえる負の感情しかなかった。
「A、晩ご飯だよ。朝ご飯は食べてなかったし、昼は寝てたでしょ？お母さん、心配なのよ。ちゃんと食べて？」
口の前に差し出されるおかず。
「うん……こめんね、いただきます」
やっぱり美味しい。
なのに体は受け付けていない。
無理やり喉の奥へ押し込み続ける。
「いっぱい食べてね。Aが健康でいてくれるのが、お母さんの願いなの」
にこやかに話すお母さん。
私はまだ、明日から始まる地獄に気付いていなかった。
〆．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1659人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あお(プロフ) - うわぁぁぁぁもうズキュンこえてドキュンですわ (2020年5月20日 23時) (
レス) id: a4e0d9fce2 (このIDを非表示/違反報告)
#藤井あかね。 - 初見です!終わり方がすごくよかったです!りゅせくん×誘拐犯とか見たくて悶えてたんでほんまに嬉しいです~!笑なにしとんっていうレベルでキス魔でしたね…りゅせくんギャップですﾆﾔﾆﾔ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 51602379ec (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - はゆなさん！完結おめでとうございます♪そしてお疲れ様でした(＞＜) 時折泣いてしまう場面もあり、凄く感情移入しやすかったです^^* オマケも楽しみにしております！ほんとうにお疲れ様でした^^* (2017年4月9日 7時) (レス) id: 597aa18841 (このIDを非表示/違反報告)
mrn - はゆなさん» 完結おめでとうございます！めっちゃわかります！確かに叶えてくれそうですね(笑)藤井さんの声で言われたら絶対にキュン死ですよ(笑) (2017年4月8日 0時) (レス) id: ae9b8e761d (このIDを非表示/違反報告)
はゆな(プロフ) - 有菜さん» 感想と応援コメント、ありがとうございました！おかげさまで無事に完結しました(*´ω`*)最後まで胸きゅんしていただけたら嬉しいです。 (2017年4月7日 16時) (レス) id: 0cb07950a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はゆな
| 作成日時：2017年2月6日 0時
